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 ビッグデータ時代を迎え、データ分析スキルはますます重要になりつつある。ビッグデータ関連のITコンサルティングや要件定義などを手がけるうえでも、データサイエンスに関する基本的な知識は押さえておきたいところだ。ユーザー企業がシステム導入をする際に、どのような課題を解決したいと考えているのか、また、解決手段としてどのようなデータ活用方法や分析手法があるのか、を押さえておく必要がある。

 そこで本連載では、データ分析人材を多く抱え、データベースマーケティング支援を軸に業績を伸ばしているブレインパッドが、データ分析関連の基本を解説する。ITベンダーや情報システム部門のSE(システムエンジニア)を主な読者と想定しつつ、B to C(企業対個人)のマーケティング分野における事例を引き合いに出しながら説明を進めていく。


 データベースシステムの刷新に当たって、バッチ処理の高速化やデータ検索速度の向上などによる業務効率向上を図ってきたユーザー企業が、昨今はマーケティング活動にデータを有効に活用し、売り上げの維持・拡大にITを活用しようと検討を始めている。

 この背景としては、ビッグデータ関連の報道の増加や、Hadoop※注1に注目が集まっていることが挙げられる。加えて、「BigData is new oil」と表現されるように、データが新たなサービスや収益を生み出せるということが、先進企業によって徐々に証明され始めているからだろう。

注1
大規模データを分散する際に、複数のマシンの分散処理を支援するJavaソフトウェアフレームワーク。オープンソース・ソフトウエアとして提供されている。

 最適なサービスを提供するために消費者をより深く理解したり、経営の効率化や迅速な意志決定のために可視化を進めたりするためのシステム企画のニーズは、ますます強まるばかりだ。同様な提案を既にユーザー企業から求められているSEも多いだろう。

 データの準備や活用方法、分析手法などについて踏み込んだ解説は次回以降で行うこととし、初回の今回は、ユーザー企業におけるデータ分析ニーズの動向、および、分析手法の活用動向について整理しておきたい。

企業における課題

 これまでも各企業では社内のデータをできる限り活用しながら、様々な分析の試行とマーケティング施策を繰り返し行ってきた。クロスセル※注2促進や、休眠活性化などによって既存顧客1人当たりの売り上げをアップさせるマーケティング手法の1つとして、10年ほど前からCRM(顧客関係管理)※注3は注目され続けてきた。

注2
ある商品を購入または購入検討中の顧客に、別な商品を同時に薦める販促活動のこと。例えばスマートフォンを購入検討中の顧客に、ファッショナブルな防護カバーを薦めるなどが典型例。
注3
Customer Relationship Managementの略。企業が顧客データベースを活用し長期的な関係を築くためのマーケティング手法。顧客の対応にきめ細かく対応することで、商品・サービスを継続的に利用してもらうことを目的とする。

 ただし従来のCRMの手法は、RFM分析※注4のアプローチが取られることが多く、購買金額や購買頻度から顧客の状態を正確に把握する顧客管理といった側面が強い。つまり、顧客の現在の状態まではデータから分かるが、次にどんな販促を行えばよいか、次の打ち手はマーケティング担当者の仮説のセンスに負うところが大きい(図1)。

注4
R(recency:最新購買日)、F(frequency:累計購買回数)、M(monetary:累計購買金額)の3つの視点から顧客のセグメンテーションなどを行う顧客分析手法の1つ。

 例えば、分析によって休眠顧客が多いセグメントが発見されたとしても、すぐに現時点で有効なアプローチを見いだすことは難しい。改善施策を考案できたとしても、多くのケースではもっと後の時点で発生する休眠顧客に対して実施することとなり、現時点で休眠状態に陥っている顧客には対応できないという手法的な限界が存在する。

 また既にこうしたCRMの手法は、ほとんどの企業で取り組まれており陳腐化が進んでいる。顧客側に視線を向けると日々大量の提案を受け取っている状態となっているはずで、複数企業から画一的な提案を受けていることが、かえって離反の原因となっている可能性も十分に考えられる(図2)。

図1●データ分析上の問題点
図1●データ分析上の問題点
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図2●顧客視点で見たCRM手法の課題
図2●顧客視点で見たCRM手法の課題
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