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 「メールなどの情報系システムしか、日本にはもう残っていない」。基幹系システムの海外移転プロジェクトを終え、OKIデータ 企画管理本部長の大泉洋子は胸を張る。

 2012年5月、日本で運用していた基幹系システムを、マレーシアにあるNTTコミュニケーションズのDCへ全面移転した(図1)。新システムは同DCにNTTデータが構築したクラウド環境を使って再構築し、日本を含むアジア拠点から使う方式に切り替えた。

図1●OKIデータの基幹系システム移転プロジェクトの全体像
図1●OKIデータの基幹系システム移転プロジェクトの全体像
日本のDCで運用していたSAPのERPパッケージをマレーシアにあるNTTコミュニケーションズのDCで稼働させる

 OKIデータは、グローバル拠点を、日本を含むアジア、北米、欧州の三極に分け、それぞれで基幹系システムを構築・運用している。今回の移転プロジェクトの対象は、中国とタイにある主力工場と、日本の本社や工場など12拠点が利用している会計や生産管理などのシステムである。

 基幹系システムをごっそりとマレーシアに移した狙いは、システム運用コストの削減と、BCP(事業継続計画)の強化などだ。サーバー設置費用や電気料金などが安いマレーシアのデータセンター(DC)を利用したり、クラウドサービスを利用したりすることで、運用コストを今後3年間で2010年度比20%減を目指す。移転を機にシステム基盤を刷新することで耐障害性を高めるなど、BCPも強化できた。

きっかけはAS/400のリース切れ

 移転の契機は、基幹系システムを稼働させていたオフコン(日本IBMのAS/400)のリース切れだ。OKIデータは2006年にAS/400上で稼働する独SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージを導入し、東京・三鷹DCで運用してきた。

写真●プロジェクトを担当した主要メンバー
写真●プロジェクトを担当した主要メンバー
企画管理本部の東潤一郎執行役員(後列左)、大泉洋子本部長(同右)、経営情報部の大堀和男部長(前列右)、久保浩治課長(同左)

 これまで大きな障害もなく安定運用してきたが、コスト面での課題に直面した。「AS/400の最新機種に入れ替えると、2010年度比で運用コストは上がる。これではシステム全体のコスト削減目標を達成できない」(経営情報部部長の大堀和男氏)。

 そして、次期システムを検討するプロジェクトチーム(写真1)は、こう結論づけた。「AS/400を使い続けると特定ベンダーへの依存度が高くなり、保守や運用コストが高止まりしてしまう。オープンなシステム環境に移行し、抜本的に新しいシステム像を考えるべきだ」(大泉氏)。