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 アジア地域の生産拠点用の基幹系システム導入を進めている大紀アルミニウム工業所で、2012年7月からアジア標準システムの導入を進めているのがタイ工場だ(図5)。個別に構築していた従来システムを新システムに移行し、同時に日本のIT推進室がタイ工場の基幹系システムを管轄するようにする。

図5●アジア標準システムの展開計画
図5●アジア標準システムの展開計画
標準システムの第一弾を、新たに建設したインドネシアの工場で導入し、タイやマレーシアの既存工場にも順次導入する予定。各拠点での導入ノウハウや、改善点を次の拠点展開に活用していく

 従来システムは導入から10年程度が経過しており、生産管理システムなどで「使い勝手が悪い」という声が出ていた。このため、アジア標準システムへの移行は、特に現場の反発なく受け入れられたという。

マレーシア工場への展開も検討

 先行するインドネシアとタイへの導入実績と稼働状況を見ながら、もう一つの主力生産拠点であるマレーシア工場の基幹系システムもアジア標準システムに移行することを検討していく。

写真3●大紀アルミのタイ工場
写真3●大紀アルミのインドネシア工場
写真3●大紀アルミのタイ工場(上)とインドネシア工場(下)
いずれも主力の生産拠点で、アジア標準のシステムを導入

 マレーシア工場が現在使っている基幹系システムは、現地IT企業のERPパッケージを使って同工場が独自に構築した。今後、現行システムの使い勝手や運用状況、現場社員の意向などを精査し、タイ工場の導入プロジェクトが終わるタイミングで、マレーシア工場もアジア標準システムに移行するかどうかを判断する方針だ。

 現時点では、タイ工場の導入作業が終わったあと、2013年からインドネシア工場でA.S.I.Aのバージョンアップ作業に着手する予定である(写真3)。最終判断次第では、インドネシアでの作業と同時並行で、マレーシア工場でのアジア標準システムの導入を進めることになる。

「見積もり価格が違いすぎる」

 今後、アジア地域でシステムを展開する際の主な課題は二つある。一つは、現地でシステムを構築するときにサーバーなどの機器調達作業をいかに効率化するか。もう一つは、クラウドへの移行時期をどう見極めるかだ。

 「アジア各国ではサーバーなどの機器を購入する際の適正価格が分かりにくく、見積もり価格の差が大きい」と大野室長は指摘する。インドネシア工場でシステムを導入する際、サーバー調達を含めたLAN構築のソリューション提案を、現地に拠点を持つ日系ITベンダー4社に依頼した。

 すると同じ条件にも関わらず、最も価格が高い見積もりのベンダーと最安の見積もりを出したベンダーの価格差が2倍程度もあったという。「日本では同条件のコンペでここまで価格差が付くことはない」(大野室長)。

 タイとインドネシアの工場は現在、基幹系システムのサーバーに米IBMの「System X」シリーズを採用している。アジア各国では複数ベンダーへのコンペは必須であるため、現地での値ごろ感を早期に把握したり、選定基準を作ったりして機器調達作業を効率化したいとする。

 クラウドへの移行も今後の検討課題とする。インドネシア工場へのシステム導入では当初、クラウドの利用も検討した。

 しかしインドネシアでは通信サービス市場の競争が少なく、先進国に比べ通信コストが高いことが調査で判明。クラウドではなく、工場にサーバーを設置する形式のほうが安上がりであると結論付けた。「インドネシアでは、1Mビット/秒の帯域の通信回線でも、年間の通信コストが100万円以上になってしまう」(大野室長)。

 一方で、クラウドのほうが管理が容易で、新拠点へのアジア標準システムの展開をさらに早められるとの期待もある。現地の通信サービスや国際ネットワークの料金の状況を注視して、料金水準が下がってきたタイミングで改めて、クラウドへの移行を検討する考えだ。

日本のシステムはもう現状維持
大紀アルミニウム工業所 大野 博志 IT推進室長
大紀アルミニウム工業所
大野 博志
IT推進室長

 再生アルミの主要顧客である自動車や自動車部品、電機メーカーの生産拠点が海外展開を加速している。この動きに合わせて、当社も海外へ迅速に出ていかないとビジネスチャンスを逃してしまう。顧客が新しい国に工場を作れば、そこに付いていく。こうした経営環境で、アジア標準システムが果たす役割は非常に大きい。

 リーマン・ショック以降、事業の中心は海外へ完全にシフトした。今も国内工場の一つは休止しており、一部ラインを廃止している工場もある。国内生産はピークの7割程度にしか戻っていない。その一方で、海外生産は伸び続けている。

 事業と同様に、IT投資の重点もリーマン・ショックを境に大きく変わった。国内向けのIT投資は、システムを現状維持できる程度にとどめる。IT投資の比率を増やすのは、もっぱら海外拠点向けになる。

 実は2008年秋まで、日本の基幹系システムを全面刷新する計画を進めていた。しかし、リーマン・ショックで事業環境が激変し、システム刷新計画を凍結。計画そのものも無くなった。(談)