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 サントリーホールディングス(HD)も、日本用のシステムを海外へ移し始めている(表1)。現在は東京と大阪にそれぞれDCを借りて会計や販売、生産管理などのシステムを日本の拠点用に設置。相互にバックアップを取る体制にしてある。

表1●日本を含むアジア地域のシステムを、国外のデータセンターに集約している主なユーザー企業
表1●日本を含むアジア地域のシステムを、国外のデータセンターに集約している主なユーザー企業
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 この2カ所のDCから、シンガポールに設置しても問題ないシステムを移す方針だ。狙いはBCP強化である。日本からのシステム移転を2012年から順次開始しており、3~5年後をメドに東京のDCは廃止することを検討。日本用のシステムはシンガポールと大阪の2カ所のDCで運用し、一部システムは相互にバックアップを取る考えだ。コストについては従来比2~3割程度の削減が可能と試算する。

世界で集約、クラウドに移行

 サントリーは日本だけでなく、海外グループ各社のシステムを地域ごとにDCへ集約してく施策をグローバルで進めている。このプロジェクトを円滑に進める鍵が、「グローバルITカタログ」と呼ぶ文書だ。世界中のサントリーグループにおけるIT投資のあり方や、サービスメニューなどを規定したものである。

 ITカタログには、PCやITサービスの共同購買のやり方、利用する製品やサービスの価格/料金メニューが並ぶ。サントリーHDは各国の主要ITベンダーと交渉し、サントリーグループであれば中規模の子会社であってもITカタログの価格が適用されるルールを実現している。

写真1●サントリーがシンガポールで利用する富士通のデータセンター
写真1●サントリーがシンガポールで利用する富士通のデータセンター

 ITカタログは、システム集約のような本社主導の施策について、海外グループ会社から賛同してもらうための重要なツールになっている。

 「海外グループ会社から魅力的と思ってもらえるメニューをそろえて提示すると、その後の説得もスムーズだ」と、サントリービジネスエキスパートの椎野浩幸グループ情報システム部部長は話す。

 サントリーは現在、欧州ではドイツ、アジアではシンガポール、オセアニアではオーストラリアのDCを使い、ITインフラの集約作業を進めている。いずれも富士通のDCであり、同社のクラウドサービスを利用する計画だ(写真1)。コスト削減やガバナンスの強化を目指す。前述のITカタログに、クラウドのメニューも新たに盛り込み、椎野部長が海外グループ各社のCIOに施策を説明して回った。

図2●日本のシステムの一部をシンガポールに移転するサントリーの取り組み
図2●日本のシステムの一部をシンガポールに移転するサントリーの取り組み
東京と大阪のデータセンターに設置しているシステムの一部を、アジア拠点用のシステムを集約しているシンガポールに移転する
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 アジア地域でシンガポールのDCを使うことに決めたのは、グループの食品会社セレボス・パシフィックがシンガポールを本拠地とし、IT人材も現地に多いことが大きな理由。シンガポールのDCは品質が高いことなども決め手となった(図2)。

 セレボスはアジアの11カ国・地域に拠点があり、それぞれの拠点で基幹系システムを構築していた。クラウド基盤への集約プロジェクトに沿って、これら拠点の基幹系システムをシンガポールのDCに集約。2012年8月から各国で本格利用を開始している。