「IT分野は製造業などの民間需要が好調で、構造改革の効果も出てきている」。
NECの遠藤信博社長は、2012年4~9月期決算会見の席上、復調に向けて自信を見せた。営業利益は、全社で前年同期比7.0倍、ITソリューションの事業も同28.5倍までそれぞれ拡大した(表)。人員削減が中心の構造改革で、4~9月期に約130億円の効果を生み出したという。
通信会社のスマートフォン関連投資による大型案件が、システム導入などITの事業でも収益に貢献している。今年5月に買収を発表したオーストラリアのITサービス会社CSGの事業を7~9月期に連結化したことも、売上高を押し上げる要因となった。
NECも含め、海外事業の収益への影響が大きくなっている。
NTTデータは海外企業の買収を継続している。連結会社が増え、のれん代の償却費がのしかかり営業利益が2.0%減となった。
海外事業は、売上高が前年同期比15.6%増の577億円と伸張している。欧州は苦戦しているものの北米が堅調で、「海外事業の営業利益率はのれん代の償却を除くと10%の高水準」(椎名雅典取締役常務執行役員)という。
日立製作所の情報・通信システム部門の営業利益は、12.3%減の272億円だった。不採算案件の影響が色濃く出た格好だが、「現在はプロジェクト管理を強化し、改善の傾向にある」(中村豊明執行役副社長)。
そうした中でも、中国におけるATMや、世界中に販売網を持つストレージ装置のビジネスが堅調で、同部門の売上高は4.5%伸長した。
富士通の連結決算は1.0%の減収だった。理由について加藤和彦CFO(最高財務責任者)は「国内は堅調だったが、欧州大陸向けのビジネスが厳しかった。ドイツの市場を中心に実需の落ち込みが大きい」と説明する。
回復途上にある大手IT各社の業績。その行方を左右するのも海外事業となりそうだ。
富士通は欧州市場の回復が見込みづらいことと、PCの価格競争激化による採算悪化を理由に、通期業績予想を下方修正。通期では5期連続の減収になる見通しだ。
日立の中村副社長は「中国政府関連の発注に影響が出始めている。今下期以降(の業績に)に反映してくるかもしれない」と警戒。NTTデータの岩本敏男社長も「中国で進行中の案件は心配ないと思うが、新しい事業の掘り起こしにブレーキがかかるかもしれない」と、各社とも動向を注視している。