PR

 PMOとしてプロジェクトマネジメントを実施していく場合、PMOとして期待される効果に「品質マネジメント」があります。筆者はPMOとして数多くのプロジェクトに関わってきましたが、PMBOKに書いてあるような標準偏差を用いた管理など、やったことがありません。それでは、PMOとしてどのように品質に関わって行けばよいのでしょうか。今回はシステム開発における品質管理について考えてみたいと思います。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ 取締役 PMP


 PMBOK(第4版)の品質管理の章には、プロジェクト品質マネジメントは「品質計画」「品質保証」「品質管理」の3つのプロセスから構成されていると記載されています。PMBOKはプロジェクトマネジメントを実施していく者にとって教科書的な存在ですが、果たしてどれだけのシステム開発プロジェクトでPMBOK通りの品質管理が行われているのでしょうか。「品質保証」と「品質管理」の違いが分かる人は、どれだけいるのでしょうか。また、その違いが分かったとして、果たして品質は向上するのでしょうか。

 恥ずかしながら筆者も「品質保証」と「品質管理」の違いを正確に暗記して言うことができませんし、誤解を恐れずに言えば、その違いを知ったからといって「品質管理(品質保証)」ができるようになるとも思えません。

「このプロジェクトの品質は目標値±3σの間に入ってますので…」

 また、PMBOKには品質管理のツールとして「特性要因図」「管理図」「ヒストグラム」「パレート図」「統計的サンプリング」などが挙げられています。しかし、「管理図」で標準偏差を利用して品質管理をした現場を私は経験したことがありませんし、あまり聞いたこともありません。

 そもそも「このプロジェクトの品質は目標値±3σ(σは標準偏差)の間に入っていますので…」などと言われても、ほとんどの人が「何のこっちゃ?」という感じになるでしょう。また、私の経験が少ないだけなのかもしれませんが、「特性要因図」や統計的にサンプリングを実施している現場もあまり聞いたことがありません。

 PMBOKはベストプラクティスであり、役に立つ場合が多いのは確かです。しかし、超大規模のプロジェクトを除けば、PMBOKの品質管理は実際のITプロジェクトには大げさすぎるというのが私の実感です。

 筆者がPMOとして品質管理を行う場合に注意する主なポイントは以下の通りです。
(1)品質指標の妥当性と目標値の意味づけ
(2)設計品質と開発品質
(3)プロセス品質とプロダクト品質
(4)非機能要件に関する品質の確保

 それぞれについて、一つひとつ見ていくことにしましょう。

品質指標とは何か?

 プロジェクトの、特にテスト工程において、皆さんは少なからず品質目標を立てたことがあると思います。よく使われる指標には「テスト密度(単位当たりのテストケースの数)」や「バグ密度(単位当たりのバグの数)」などがあります。ここで、ファンクションポイントやコード行数といった単位に、各社が独自に持っている係数を掛けて、基準値を計算するのが一般的です。ただし、この係数自体あまり説得力があるものではなかったりします。

 「ソフトウェア開発データ白書」(情報処理推進機構著・編集)などの白書にて公表されている平均値を係数として利用する場合も少なくありません。大手のシステムインテグレータやITコンサルティングファームは独自の社内指標を持っています。しかし、これらもプロジェクトごとに異なる規模や特性、前提条件を加味して考えると、設定した単一の指標を満たしていれば「品質OK」というものでもありません。

 それでは、品質指標とは一体何なのでしょうか。誤解を恐れずに言えば、「品質の指標とは単なる目安でしかない」と筆者は考えています。当然ですが、同じものを同じ品質で数多く製造していく製造業においては、品質目標は重要な指標です。