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 システムのExitルールをどのように作り、どう定着させればよいのか。ユーザー企業の実践例から見えてきた、今すぐに準備を始めたい三つのルールを紹介しよう。自動的にシステムを廃棄する「ユーザーを納得させるルール」、廃棄の必要性をユーザー自身に気づかせる「無駄を見つけ出すルール」、システム部門が無駄を見つけ「自分たちで止めるルール」である。このうち、今回は「ユーザーを納得させるルール」を取り上げる。

 Exitルールの理想型は、あらかじめ決めておいた基準に沿って自動的にシステムを廃棄したりサービスを停止したりするものだ。システムを廃棄しようとするたびに、ユーザー部門とシステム部門が意見を戦わせることはない。ルールに沿って淡々と不要なシステムを捨てていく。

 これまでは「減価償却が終わった」「保守サポートが切れた」といった外的要因を理由に、システムを廃棄するケースが多かった。そうではなく、システムの存在意義や活用状況といった、ユーザー部門の視点でルールを作ることが肝心だ。明確な理由ならば、ユーザー部門を納得させられる。

 「Exitルールはシステムの投資を認めるルールと表裏の関係にある」。システム投資の最適化などを手がけるプライスウォーターハウスクーパースの一山正行シニアマネージャーは助言する。「ビジネス上の効果があるから投資を認める。逆に、その基準を満たせなくなったら、システムを捨てるのは当然のこと。ところがルール化されていない」(同)。

 投資判断と同じようにExitルールを考えるという点は、ルールの策定前に開発したシステムについても当てはめることができる。「明らかにシステムが使われていない」「当時と事業方針が変わってビジネス上のメリットが無くなった」といった基準を作ることで、ユーザーが納得した上で無駄なシステムを廃棄できるようになる。

 ユーザー各社はどのような基準のExitルールを作り、システムを廃棄しているのか。JTBや大丸松坂屋百貨店、日本郵船、クロス・マーケティングの実践例を見てみよう。

3年以内に効果を出せるか──JTB

 JTBは2012年4月から、システムを新たに開発する段階からExitルールを本格的に適用し始めた(図1)。

図1●JTBにおけるExitルールの概要
当初計画していた効果を3年以内に出せなければ廃棄する
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 システムを利用するユーザー部門は、投資のりん議を上げる際、投資対効果を宣言する。そして、システム稼働の半年後から3年後までに、宣言した効果を得られなかった場合はシステムを廃棄する、というルールだ。対象は開発費用が3000万円以上の案件で、年間約40案件にこのルールが適用される見込みだ。

 システム投資を起案する場合、ユーザー部門はシステム部門などで構成されるIT戦略委員会事務局と共同で、約1カ月かけて投資対効果や、廃棄するかどうかを判断する時期などを決める。それらを書面にまとめ、毎月1回開催されるCIO(最高情報責任者)を委員長とするIT戦略委員会に提出し判断を仰ぐ。

 あえて効果を過小に申請すれば、Exitルールのハードルを下げることはできる。だが、効果が小さくなると、システム投資そのものが認められなくなる。IT戦略委員会の事務局長を務める佐々井剛志IT企画室長は、「開発段階から廃棄するかどうかの基準も明確にすることで、無駄なIT投資の抑止力になる」と説明する。

 JTBは一部のシステムについて、過去の投資案件についてもExitルールに基づいて廃棄するかどうかを判断している。廃棄したシステムの一つが、顧客データの分析システムだ。予約履歴などの分析結果を基に顧客の好みを分析するものだ。ターゲットを絞りこむことで、約1億円の販促費を削減する計画だった。

 実際、販促費は削減できたという。ところが、分析結果によるものなのかどうかが曖昧だった。他のシステムにも似たような機能があったため、「維持費をかけてまで使う必要がなくなったと判断した」(佐々井室長)。