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 システムのExitルールは、ユーザー部門が納得することが大前提だ。システムに対するコスト意識が低く、「システムはあって当然」というユーザー部門の場合、存在意義のないシステムを自動的に廃棄して新たな投資を生むルールを作るのは難しい。

 「リーマン・ショック直後は、ユーザー部門はシステム部門と一丸となって、システム投資などの無駄を必死に探した。その取り組みが定着するかと思ったが、当時の熱は多くの企業で冷めてしまっている」と、日本ヒューレット・パッカードの宮原猛シニアコンサルタントは指摘する。

 そういった状況では、まずはユーザー部門自身がシステム投資の無駄を認識できるルール作りから始めるとよい。例えば、システム関連費用の内訳をガラス張りにし、ユーザー部門が経費削減の一環で無駄を見つけられるようにする、といった方法だ。

 「ビジネスの重要度に応じて、ユーザー部門が自らシステムの優先順位を決めることで、Exitルールに対する納得感も醸成できる」(シグマクシスの溝江幸助パートナー)。何が無駄なのかを見つけ出すルールは、システムそのものだけでなく、運用サービスも対象になる。運用品質を見直して過剰なサービスをそぎ落とせば、そこで浮いた予算を新たな投資に回すことができる。

 システムの無駄を見つけるためのルールを作ることで、ユーザー部門の意識改革に成功したヨコオやニチレイ、対象を運用サービスにも広げた住友林業やダイキン工業、年2回の見直しプロセスを定着させたアステラス製薬の実践例を見ていこう。

利用料をユーザーに請求──ヨコオ

 ERP(統合基幹業務システム)パッケージは月額10万円、グループウエアは月額1300円──。車載アンテナなどを製造するヨコオの生産部門や販売部門には、毎年10月になるとシステム部門からの請求書が届く。社内にあるシステムの開発・運用にかかる費用を、利用頻度やユーザー数に応じて算出したものだ(図1)。

図1●ヨコオのシステム利用料金の明細例
ユーザー部門や事業所ごとに、システムの利用料金を請求。廃棄するかどうかを検討させる
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 ヨコオにおける「無駄を見つけ出すルール」は、システム関連費用をユーザー部門に請求することである。そして、「翌年のシステム利用料を、ユーザー部門が支払いたいと思うか」が、システムを廃棄する判断基準となる。

 ユーザー部門が料金に見合った価値を感じなければ、システムは廃棄する。「価値に見合うかどうかをユーザー部門が自ら判断することで、納得した上で廃棄できるようになった」(深川浩一経営企画本部長)。

 同社は2007年まで、システム関連費用は、オフィスの賃料や電気料などと同様、各部門の共通費として予算立てしていた。その結果、「ユーザー部門は、システムは無料で使えるものと思っていた。請求するルールに変えたところ、コスト意識が芽生えた」と深川本部長は説明する。

 これがきっかけで、2012年3月に廃棄したシステムの一つが、税関への提出書類を作成するシステムだ。輸出入担当部門が数年間利用していたシステムだ。ユーザー部門に請求するシステム利用料は月額10万円である。

 ユーザー部門からの相談をシステム部門が受け、システムを利用している担当者を聞き取り調査したところ、「実はExcelで代用できるレベルの使われ方しかしていなかった」(深川本部長)。そこでExcelで書類を作成できるようにし、既存のシステムを廃棄した。

 サーバーやネットワークを利用しないため、ユーザー部門に請求する利用料は「0円」。当然、会社がパッケージベンダーに支払う保守料などの負担もなくなり、新規投資の原資を生み出せた。