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写真1●「The Startup Owner's Manual」の日本語版「スタートアップ・マニュアル」
写真1●「The Startup Owner's Manual」の日本語版「スタートアップ・マニュアル」

今回は、ブランク氏の“日本の一番弟子”である堤孝志氏による「ゲストブログ」です。1990年代の堤氏自身による新事業立ち上げ経験や、スタートアップ支援に回ってからの顧客開発手法を使った成功事例など、身近なエピソードが満載です。(ITpro)

 今週(11月12日の週)、「The Startup Owner's Manual」の日本語版(邦題:スタートアップ・マニュアル)が発売されました。日本語版は、ベンチャーキャピタリストの堤孝志氏が、飯野将人氏と共に翻訳したものです。そこで私は堤氏に、顧客開発にとって素晴らしいこの日を祝って、当ブログへの寄稿をお願いしました。

 日本での「スタートアップ・マニュアル」(写真1)の出版を祝し、スティーブさんと共著のボブ・ドーフ氏に平素のご支援に対する感謝の意を表しつつ、私がこの本に興味をもったきっかけや、日本における顧客開発モデルとその実践講座であるリーン・ローンチパッドの広まりについて、世界中のスティーブさんの読者に少しだけご紹介したいと思います。

若き日の失敗

 1990年代にさかのぼりますが、当時私は総合商社でコンピュータ・ネットワーク機器の新規事業の立ち上げを複数行っていました。

 私が最初に立ち上げたのはイーサネットスイッチの事業でしたが、それに取り組んでいるうちに、「ATM25」と呼ばれる25Mビット/秒のATM(非同期転送モード)という新技術に出会いました。ATM25は、イーサネットの2.5倍(当時)の性能を有し、データだけでなく音声や映像といったマルチメディア通信も実現できる「すごい」技術でした。

 私はすっかりそのとりこになり、ATM25技術を活用した製品の事業を立ち上げることにしました。私は当該事業の立ち上げに際して、最初の事業でにわかに培ったマーケティングの経験を生かしながら、スティーブさんの言うところの「猛攻撃による市場投入」を行ったところ、多くの業界誌に取り上げられ市場投入は成功したかにみえました。

 ところが顧客の反応はそれとは全く裏腹でした。多数の顧客に売り込みをかけたものの、「確かにATM25は面白い技術だけど、今すぐ必要はないなぁ」とか「ATM25には非常に注目しているのだが、マルチメディア通信をするには、既存のインフラを置き換える必要があり、そこまで重要なものではない」といった反応が続き、誰も急いで買おうとしませんでした。

 私は、この製品が顧客にとって「あればよい」(nice to have)ものであって、「なければならない」(must have)ものではないと思い知らされ、あっけなく事業開始後1年で撤退を余儀なくされました。

 私はこの苦い経験を通して、時間とお金を投じる前に顧客と話をすることがいかに重要であるかを学び、以降のスタートアップではそれを徹底するようになりました。その結果、私が3番目のスタートアップとして1990年代末に立ち上げたWebサーバーの負荷分散技術による事業では、成功を収めることができたのです。