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 企業のCEO(最高経営責任者)が社内のIT活用や社外も含めたテクノロジーの動向に目配せしなければならない局面が増えている。CEOとCIO(最高情報責任者)の間での連携が重要だが、この2者は価値観や利害が対立することも多い。米ガートナーでリサーチ部門で「経営とITの連携」を専門に活動しているマーク・ラスキーノ(Mark Raskino)氏は、テクノロジーの変化が激しい時代の「CEOとCIO」のあり方について語った。

(聞き手は清嶋 直樹=ITpro


「ITを理解しないCEO」「ビジネスを理解しないCIO・IT部門」は永遠の課題で、なかなか解消される気配がない。なぜこうした意識のギャップが生じるのか。

米ガートナー バイスプレジデント 兼 ガートナーフェローのマーク・ラスキーノ氏
米ガートナー バイスプレジデント 兼 ガートナーフェローのマーク・ラスキーノ氏

 ギャップが生じるメカニズムははっきりしている。CEOやCIOは、このメカニズムを意識しておくだけでも、ギャップを埋めるのに役立つはずだ。

 メカニズムとはこういうことだ。仮に、自分1人で事業を立ち上げる時のことを考えてみたい。最初は、事業企画も財務も情報システムも、全部1人で面倒を見るだろう。事業が成長するにつれて全部を1人でこなすのは困難になる。そこで事業をいくつかのタスクに分けて、それぞれの専門家に委任するようになる。

 タスクにも様々な種類がある。マーケティング、財務会計、法務などは、それぞれ専門性は高いが、タスク内容やそれを取り巻く環境の変化は緩やかだ。CEOは少し時間を取れば、自分で勉強して理解を深めることもできる。いったん習得した知識は当面の間使える。

 一方で、ITやテクノロジーの分野は変化が激しい。CEOには使える時間に限度がある。一部の「スーパーマン」を除けば、専門知識を習得して変化をフォローし続けることは不可能だ。CIOやIT部門に多くを任せざるをえない。

 いったん任せてCEOの意識からITが外れてしまうと、ギャップが生じる。CEOは、投資家や顧客、提携相手らとのミーティングに限りある時間を割かなければならない。経営全般を統括していくうえで、ITだけに余分な時間を割くことはできないのは当然だ。

CEOは成長とコストにしか関心がない?

ITはCEOの関心事ではないのか。

 CEOの視点から見れば、ITは経営全体のごく一部でしかないのが実情だろう。ガートナーが全世界の有力な情報システムユーザー企業(ソフトウエアベンダー、政府機関などを除く)のCEOを対象に毎年実施している調査「CEOサーベイ」では、「2012年のビジネス優先事項」を尋ねている。この結果で、「成長」と「コスト」が突出して1位と2位を占めた。「イノベーション」や「テクノロジー」は下位グループに入る。

 ある意味当然ではあるが、CEOは、CIOやIT部門が思っているほど、ITそのものには関心がない。それがビジネスにどう影響を与えるか、特に成長とコストに影響があるかどうかだけに関心がある。