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 リーン・スタートアップが広く知られるようになる前の2010年から、同手法に注目して「Lean Startup Japan」サイト(写真1)などを通じて普及活動に努めてきたのが和波俊久氏だ。起業家へのアドバイスを続ける一方で、企業向けのコンサルティング活動も行っている。“リーン・スタートアップの歴史”を知る同氏に、この1年で起こった変化と今後解決すべき課題や方向性について聞いた。

(聞き手は菊池 隆裕=ITpro

2012年を振り返って、どんな1年だったでしょうか。

写真1●Lean Startup Japanのホームページ
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 書籍「リーン・スタートアップ」が4月に発行され、同時に著者のエリック・リース氏が来日(関連記事)、リーン・スタートアップの認知度が一気に上がりました。

 以前は「リーン・スタートアップとは何ですか?」というところから説明を始めていましたが、書籍があることでそこは省いて話ができます。本を読んだ方となら、MVP(Minimum Viable Product)、価値仮説、成長仮説といった書籍で使われる用語を使って説明が可能です。共通言語ができた感じです。

 これは、起業家だけでなく、企業の中で新事業を始める方にも有効でした。社内で新事業を立ち上げようとする場合に、同僚や経営層に対して説明がしやすくなりました。自己流のアプローチではなく、新事業に取り組む人たちには共通のアプローチであることを主張できるのです。

スタートアップ企業と、企業内スタートアップとの違いは、どんなところにありますか。

 何もないスタートアップ企業と、既存の企業内で新事業を始めるのとでは、環境が全く違います。新事業は売り上げがありませんから、進捗管理や評価方法が既存事業とは別だと考える必要があります。

 例えば、リーン・スタートアップではピボット(細かな軌道修正)と呼んでいますが、新事業の立ち上げにおいては顧客からのフィードバックに従って、現場の判断でやり方を頻繁に変える必要があります。短期間で顧客の要求に最適化していくスピード感が、スタートアップ企業には欠かせません。既存事業であれば、現場の判断で変更するのはもってのほかではないでしょうか。

 ソフトウエア開発を外注するか、内製するかという点でも違いがあります。外注するとノウハウが残りませんが、内製する場合にはいつまでも開発した人を残しておく必要があります。相容れないものです。