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 「『アイデアだけ持って沖縄に行けば成功できる』、沖縄県をそんな場所にしたい」――。そう語るのは、沖縄県商工労働部 情報産業振興課 情報振興・金融特区班の仲里和之主査だ。沖縄県を“起業のメッカ”とするため、起業に欠かせないITインフラを沖縄に充実させる。このような構想を抱いて、沖縄県は2013年4月から新しい公設民営データセンター(DC)の建設に入る。

 沖縄県は2012年度に、DCの基本設計を行うために4億円を予算計上。さらに2013年度には30数億円規模の予算を計上して、同県うるま市兼箇段(かねかだん)にあった県農業試験場の跡地に、延べ床面積5000平方メートルのDC施設を建設する計画だ。

 また2012年10月には、クラウドコンピューティングのサービスを提供する基盤システムを構築するための新会社「沖縄データセンター」を設立した。沖縄データセンターは、同県浦添市のOCCとおきぎんエス・ピー・オー、同県那覇市のリウコムが出資して設立した。同社はうるま市の公設民営DCを使って、県内企業にクラウドサービスを提供する予定だ。同社がクラウドサービスを提供するために必要な資金は、その9割を沖縄県が補助する。その代わりに同社が県内企業に提供するクラウドサービスの料金を、低く保つ。

 沖縄県の狙いは、公設民営DCから提供するクラウドサービスを活用した、新しい企業が沖縄から生まれることだ。県外から沖縄にやってきて起業するという事例を増やすために、起業者に対する支援も提供する考えだ。沖縄県商工労働部の仲里主査は、「既存のDCとも連携して、オール沖縄体制でクラウドサービスを実現したい」と意気込む。

既存DCは、首都圏のBCP需要を狙う

沖縄県名護市の公設民営データセンター
沖縄県名護市の公設民営データセンター
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 沖縄県には現在、県外企業を対象にホスティングサービスなどを提供するDCが、3施設存在する。沖縄電力子会社のファーストライディングテクノロジー(FRT)が浦添市に構える「ファーストライディングテクノロジーDC」、名護市の公設民営DC「沖縄名護DC」(写真)、宜野座村の公設民営DCである「宜野座村DC」だ。沖縄名護DCの運営はキヤノンITソリューションズの子会社であるクオリサイトテクノロジーズが、宜野座村DCの運営はNTT西日本などが担当している。

 これら沖縄の既存DCは基本的に、首都圏や関西圏などの企業のBCP(事業継続計画)需要をターゲットにしている。例えばカルビーは現在、FRTのDCを使って業務システムを運用している。カルビーは首都圏のDCとFRTのDCの二カ所を使用し、業務システムをそれぞれのDCで半分ずつ運用している。もしどちらかのDCで障害が発生した場合は、もう一方のDCに業務を引き継ぐという体制をとっている。キヤノンマーケティングジャパンも2011年から、沖縄名護DCで、基幹系システムのバックアップシステムの運用を開始した。

 FRTは現在、ユーザー企業にとってより手軽に導入できる対策を用意することで、BCP需要を取り込もうとしている。例えばFRTは、ストレージ装置だけを対象にしたホスティングを始めている。ユーザー企業が首都圏のDCなどで運用するストレージ装置のデータだけを、沖縄のDCにストレージ装置にバックアップする。もし、首都圏のDCに障害が発生したとしても、データは保全できる。

 システム全体を遠隔地にあるDCに移行したり、遠隔地のDCにバックアップシステムを構築したりするのは、ユーザー企業にとって負担が大きいため、すぐに手を付けるのは難しい。より導入しやすい対策を用意することで、BCP需要の裾野を広げる考えだ。