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 前回では改善活動の展開を自身だけでなく、部下や後輩などにも広げる方法を紹介しました。空間軸での効果の拡大を目指したわけです。最終回である今回は時間軸の観点、つまり将来にわたって効果を継続させることを目指していきます。それでは以下のチェックシートをやってみてください()。

図●チェックシート(該当する□にチェック)
図●チェックシート(該当する□にチェック)

 改善の効果を定着させるためには、属人的な能力に頼り切りにしないための「仕組み」が非常に重要になります。以下では、まず仕組みが担う「役割」を最初に解説し、それから仕組みを作る際のポイントを具体的に伝えていきます。

「人が気をつける」というルールは御法度

 「仕組み」の役割の1つ目は、人間の能力を補完し、常に100%の能力を出せる状態に近づけることです。人間は非常に高い能力を持っていますが、それを常に発揮できるわけではありません。その不確実な部分を仕組みで補うことで、より確実に成果を上げられるのです。

 例えばトヨタ自動車の安全対策では、「気をつける」という言葉はルールとして見なされません。これは人間の能力に過度に頼っており、100%の安全を保証できないからです。そこで人間がうっかり注意不足になっていた時にも安全を確保できる仕組みを用意するようにしています。

 逆に私が指導したある顧客企業では、通路に電気コードや荷物台車が散乱していました。「本人が気をつけるから大丈夫」とその状態を放置していたところ、結果的に労働災害を引き起こしてしまいました。その企業は現在、現場のものの置き方について明確なルールを定め、順守することで再発を防止しています。

 仕組みの2つ目の役割は、高レベルの成果を再現し続けることです。現時点で高い改善成果を上げているのは、実践できる人材がいればこそ。しかし、時間が経過すると人材は必ず入れ替わります。「彼(女)がいなくなったら、全く改善が進まなくなった」という事態に陥らないためにも、そのノウハウを仕組みに落とし込む必要があるのです。これは4回目でお伝えした「標準」が持つ役割と類似する部分があります。

良い意味で楽をできる方法を考えてみよう

 仕組みを作るために最も気を配るべきことは、運用のしやすさです。運用しにくい仕組みでは効果を発揮できなくなるからです。良い意味で楽をできることと、当事者が楽しめることが大切です。ポイントは3つあります。

(1)以前から取り組んでいたことに組み込んでみよう

 人が新しい「こと」を始める際には一般に、「始めるぞ」と意識を高めます。こうした意識には一定のパワーが必要になります。しかし、既存の定例化された活動に組み込まれたことであれば、「いつものこと」になり、意識をあまり高めなくて済みます。つまり、なるべく無意識の状態で改善活動を続けるために、定例化された活動に組み込むわけです。

 例えば、あなたの部署には定例会議が1つはあることでしょう。その会議の報告事項の1つとして、改善活動の結果を報告するコーナーという仕組みを作るのはいかがでしょう。報告するには必ず実践した結果が必要なため、「次の会議までに一定の成果を上げなければ」と当事者によいプレッシャーを与えられます。当社が改善活動を指導する際も、少なくとも3カ月に1回の頻度で経営層向けの報告会を開催しています。こうした報告会という仕組みは活動を後押しするだけでなく、活動全体のよいペースメーカーにもなります。