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◆今回の注目NEWS◆

◎解散で「マイナンバー法案」廃案に
(NHK NEWSweb、11月16日)


◆このNEWSのツボ◆

 突然の衆議院解散によって「マイナンバー法案」が廃案になってしまった。「社会保障と税の一体改革の推進」は、野田首相が解散に応じる大前提として掲げた条件の中でも最大とも言えるテーマであった。そういう中で自民党と公明党も消費税率の引き上げに応じたわけだが、今度は法案は成立したが、そのあおりの衆院解散で、一体改革のインフラとも言うべきマイナンバー法案が廃案になったことには、不安をぬぐい切れない。

 いつの場合もそうだが、格好よいキャッチフレーズは大々的な争点となり議論されるが、その争点の解決を実行に移すべき「インフラ」は軽視されがちである。特に、そのインフラが情報システム、ITに関わるものである場合にはその傾向が強い気がする。

 例を挙げるまでもないが、古くはみずほ銀行グループの大合併のときに、人事や組織に関してギリギリまで、それこそ合併前各行の面子と意地をかけて大議論されていた。しかし、正直なところ、合併後の銀行のどのポストを誰が占めようが預金者、銀行利用者にとっては関係ない。要は、合併によって強くなったはずの銀行がどのように経営の安定を実現し、そうしたサービスを利用者に提供してくれるか---。これが全ての評価軸である。

 しかし、残念ながらみずほ銀行のシステムは、スタートで大きなトラブルを引き起こし、その後も何度か問題を起こしている。これは、おそらく誰が頭取になったか、どの旧銀行の出身者が取締役の何割を占めたかなどよりも、新しい銀行の社会的信任や預金者・利用者の評価にはるかに大きなマイナスの影響を与えたのではないだろうか。

 言うまでもないが、システム的な基盤がなければ、例えば、一体改革の大きな検討事項の一つである「給付付き税額控除」を公平・公正に実施していくことはほとんど不可能と言ってよい。私たちはシステム化にあたって十分な準備がされなかった場合の結末を「消えた年金5000万件」や「坂本竜馬よりも年長の人が戸籍上は生存している」といった事例で知ってしまった。

 今回の「社会保障と税の一体改革」も、それが十分に行われるだけのインフラの上で進めてほしい。筆者も本コラムで何度か触れてきたが、マイナンバーの仕組み自体は「完璧」なものではない。しかし、「一体改革」を推進しようとすれば、何らかの形でこういうインフラが必要なことも事実なのである。その意味で、どういう形であれ、新政権が発足し、そこで「社会保障と税の一体改革の実行」がなされるのであれば、マイナンバー、またはそれに類する形のシステムインフラが早急に検討され実現に着手されることを期待したい。

安延 申(やすのべ・しん)
SGシステム 代表取締役社長、
フューチャーアーキテクト 取締役 事業提携担当、
スタンフォード日本センター理事
安延申
通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はSGシステム代表取締役社長、フューチャーアーキテクト取締役 事業提携担当、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。