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◆今回の注目NEWS◆

衆院選:公示後も橋下氏ツイッター
(毎日新聞、12月6日)


◆このNEWSのツボ◆

 今回の衆議院選挙で、日本維新の会の代表代行を務める橋下徹大阪市長が続けていたツイッターを巡って、公職選挙法での文書制限の対象になるかどうかが話題を呼んだ。結果として橋下氏は「バカらしいが、ルールは変えれば良いのだから、今はそのルールを踏まえる」とした。

 実は、この話題は筆者が霞が関に勤務していた頃からある「古くて新しい問題」である。2000年頃には、すでにインターネットでのサイトの更新や書き込み(当時であれば個人のホームページの更新など)は、公職選挙法で制限される文書図画の掲示や配布に当たるとの判断はすでに示されていた。

 当時の意見としては、これからネット社会はどんどん進化していくのだから、こうしたルールも技術の進化に合わせて見直されるべきであるというのが一般的だった。実際、2008年に米国大統領選挙でオバマ氏が勝利したときに、すでにネット戦術の効用は盛んに議論されていたのである。
 (参考記事)オバマ陣営がネットを勝因にできた理由(nikkei BPnet 2008年11月12日)

 しかし、実際にはネット利用と政治活動規制や選挙制度を巡る議論は本格化したとは言えず、その解釈は曖昧なままである。だが、一方でグーグルが選挙情報サイトを立ち上げ、その中で候補者や政党代表と直接やり取りもできるようになってくると、立会演説会の回数やポスターの種類、枚数などを細かく規制している公職選挙法の規制自体が、そもそも何なのかと思えてくる。こういうアナログ媒体については、非常に細かい制度が定められ、他方デジタルメディアについては、すべてその場の解釈というわけにはいかなくなっているのではないか。
 (参考)グーグルの選挙情報サイト「選ぼう2012」

 仮に誰かが、「○○選挙ネット掲示板」のようなものを立ち上げて、サイト自体は中立性を標榜(ひょうぼう)していたとしても、結果としてそこに選挙立候補者への誹謗(ひぼう)中傷が集中するようなことが起きたら、公職選挙法上はいったいどのように取り扱うのだろうか。一つひとつの書き込みに遡って、その掲載の是非を判断して、削除したり残したりするというわけにはいかないような気がする。

 今回、橋下大阪市長の件で、再びネット社会と政治活動の関係にスポットライトが当たったのは良い機会である。もう一度、政治制度・選挙制度とネット社会の関係を再検討する時期に来ているのは間違いないだろう。

安延 申(やすのべ・しん)
SGシステム 代表取締役社長、
フューチャーアーキテクト 取締役 事業提携担当、
スタンフォード日本センター理事
安延申
通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はSGシステム代表取締役社長、フューチャーアーキテクト取締役 事業提携担当、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。