ユーザー企業がITベンダーに出資などで協業を仕掛け、新たなビジネスを生み出す取り組みが増えている(表)。
IT企業が持つ技術やノウハウを活用して、商品・サービスの付加価値を高めたり、本業に付随する新サービスを始めたりすることで売り上げを伸ばす目論見だ。単なる協業ではなく、資本参加など一歩踏み込んでいるのが特徴である。
大和ハウス工業は2012年12月19日、物流システム開発のSCSホールディングスを買収した。物流子会社の大和物流を通じて22億円を投じ、SCSを買収した。
大和ハウスはSCSが強みとする倉庫管理システムのノウハウが欲しかった。今後は大和物流の倉庫を利用する顧客企業に、倉庫管理システムを使い在庫管理の精度向上といった付随サービスを提供し、競合他社との差異化を図る。
大和物流はインターネット通販の物流受託を成長分野に位置付けており、2019年度に売上高を2011年度の2.5倍に当たる1000億円まで増やす計画を立てている。今回の買収をその原動力にしたい考えだ。
複合機販売のコニカミノルタビジネステクノロジーズは、自社製品の付加価値を高めるために、海外のITベンダーを買収した。2012年12月にソフト会社独ラーバー・アンド・マーカーの経営権を取得。同社が持つ業務改革サービスのノウハウを武器に、欧州における複合機の販売力を強化する。「今や複合機といったハードウエアだけを売る時代ではなくなった。ITをテコに顧客企業への提案力を高めたい」(大幸利充取締役経営企画部長)。
技術者などの経営資源を得るためにITベンダーと組む動きもある。村田製作所は2012年12月11日にソフト会社ユビキタスの第三者割当(株式総数の約2%、払込金額は約1億円)を引き受けて資本提携することを発表した。狙いはソフト技術者の確保である。デジタルカメラで撮影した写真をスマートフォンなどに簡単に送信できる仕組みを共同開発する。「重要な技術情報を開示するなど一歩踏み込んだ協業には資本提携が不可欠だった」(広報)。
ガートナージャパンの重富俊二バイスプレジデントは「技術の進化は早く、ユーザー企業が全てを追うことは難しい。今後もIT企業と組むケースは増えるだろう」と指摘する。
2013年もユーザー企業とIT企業の異業種コラボレーションは加速する可能性が高い。