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 インターネットが市民生活に欠かせなくなっている先進国で最初に起こった、大規模で広域かつ複合的な災害であろう東日本大震災。被災地の経験を基に、自治体のICT分野を中心に発生した事象と課題、現在までの対応の方向性を時系列で整理する。地震発生直後から津波到達後までを取り上げた[前編]に続いて、[後編]では、避難所開設から震災発生1週間後までを見ていき、最後に現状認識と教訓をまとめた。

3.避難所開設後

 地震発生から2~3時間後には、各地で避難所が開設された。この時点から発生した解決すべき課題について説明する(表3)。

表3●避難所開設後の事象と課題
発生した事象 解決すべき課題 対応策の進捗状況
(1)災害対策本部と避難所との間での通信手段が確保できなかった ・庁舎間、庁舎-避難所間の音声/データ通信の確保
・インターネット網との通信確保
・非常用電源の確保
前述
(2)災害対策本部と避難所との間で、情報の共有が円滑に進まなかった ・避難所運営に必須の情報の収集と共有化を進めるための手段・手順に課題があった ・避難所運営マニュアルに、災害対策本部と避難所との間でやり取りする情報の内容や手段を記載する。災害時に避難所となる施設での訓練を行う(自治体ごとの対応)
(3)安否情報への自治体の対応には幅があった ・安否情報の定義、収集・提供の方法が明確になっていない ・避難所に避難した住民(他の市町村からの避難者を含む)が申請した情報を、合意を得てホームページ上に公表する
・避難所開設のマニュアルに、避難者情報の収集、入力機器、使用するネットワークについて具体的な手順を記載する(自治体ごとの対応)
(4)避難所では、自治体からの連絡事項がスムーズに伝わらないことがあった ・多くの避難者に確実に伝達する手段の確保と避難者が情報を収集する手段の確保 ・避難所運営マニュアルに、避難者への情報伝達方法や避難者のインターネット利用に関して提供手段・方法を記載し、災害時に避難所となる施設での訓練を行う(自治体ごとの対応)
(今後の課題)
・避難者がタブレット型端末を持って集まってくることが予想される。多数の端末が一斉にインターネットを利用できるWi-Fi環境を整備する
・避難所を想定したWi-Fi環境についての研究開発と早期の実用化が期待される

(1)災害対策本部と避難所との通信手段の確保
 通信手段の確保という点では、「2.津波到達後」と同様の課題があり、対応が必要である。

(2)災害対策本部と避難所の間の情報共有
 災害対策本部と避難所の間の通信手段としては、デジタル防災無線が活用された。一斉放送を行う防災行政無線(同報系)とは異なり、災害対策本部と避難所との間で1対1の通話ができ、一般の電話による音声通話に近いものである。

 ただし、1通話の時間が数分程度に制限される、多数ある避難所から災害対策本部に通話が殺到すると輻輳(ふくそう)状態になりつながらないなどの弱点がある。このため、災害対策本部からの指示伝達には向くが、日々変わる状況の報告とそれに伴う災害対策本部と避難所との協議、必要な物資、数量などの請求には不向きであった。避難所の運営に必須である情報の収集・共有のための通信手段・手順には課題があった。

 このことから、地域防災計画に沿って具体的に行動するために策定される避難所運営マニュアルには、災害対策本部と避難所とでやり取りする情報の内容や手段を記載し、災害時に避難所となる学校などの既存のPCやネットワークを活用した訓練を行うことが必要である。

 また、避難所に物資が行き渡るためには、救援物資の受け入れ、仕分け、避難所への配達の体制作りが欠かせない。配送事業者と事前に協定を締結するなどして、救援物資の受け入れ、仕分け、避難所への配達の体制作りを進めるとともに、災害対策本部と避難所との情報のやり取りと連携させる手段や体制を確保しておくことが重要である。