日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は1月21日、「企業IT動向調査 2013」のIT予算に関する速報値を発表した。ITの利活用に関する国内最大規模の調査で、2013年度の国内IT業界の景況を占う指標にもなる。
安倍新政権による円安誘導や財政出動などの経済政策「アベノミクス」により、日本経済復活の期待が高まっている。しかし、調査結果を見る限り、IT予算を取り巻く状況が好転する気配は感じられない。
2013年度のIT予算が前年度より「増加」する企業の割合は38.6%で、「減少」する割合(34.4%)をわずかに上回った(図)。これらの差であるDI(ディフュージョン・インデックス)は4.2ポイント(pt)と、2012年度の1.7ptから微増した。
だが、楽観視できる数字ではない。IT予算を増額する企業が増えている訳ではないためだ。IT予算が増える企業(38.6%)は、前年度に比べて3.0pt減。「10%以上増加」する割合は23.2%と、同6.7ptも減少している。予算額が「不変」とする割合は27.1%と、同8.4pt増だった。
IT予算の増減傾向は、業種によって色濃く分かれる。DIが22.1ptと最も高かったのは、情報サービスや医療、教育などの「サービス」業だ。前年度より9.2pt伸びた。卸売業や小売業で構成される「商社・流通」業も好調で、DIは8.2ptである。
通信販売やオンラインマーケティングなど、サービス業や商社・流通業はネットとの親和性が高い。スマホ/タブレットやビッグデータを活用した新サービスを各社が投入するなど、IT活用の先進事例も多い。2013年度に注目すべき業界になりそうだ。
一方、覇気がないのが銀行や証券、保険などの「金融」業である。回答企業の過半数(54.5%)は、IT予算が減少すると回答した。DIはマイナス31.8ptで、前年のマイナス22.7ptからさらに悪化した。金融業は売上高に占めるIT予算の割合が高く、IT予算の絶対額も多い。DIの悪化は、IT業界にとって大きな不安要素になりそうだ。