大和ハウス工業のデジタルメディア室長である大島茂さんは大阪出身で、北海道大学の農学部林産学科で学んだ。大和ハウスに入社して、資材部(現購買部)に所属したいと考えた。
しかし、自分の役割が見つけられない部署での勤務が続き、2回も辞表を提出している。会社側の説得で思いとどまり、情報システム部門に異動してからは水を得た魚のようになった。
ここでも、大島さんは社内請負型のプロジェクトには興味を示さず、CAD(コンピュータによる設計)の導入プロジェクトや、生産管理の部品表を自動生成するシステムなど、会社に必要と思うシステムを積極的に提案し、作っていった。
大和ハウスでは、ウェブサイトの構築と運営に関して、大島さんらが情報システムを整え、販促室や広報室(共に当時)がコンテンツを担当する。だが、当初のチームは有志が作った委員会で予算も権限も無く、各部門の協力が得られないという状態だった。
大和ハウスのサイトでも、不動産の物件情報は常に最新のものにしておかなくてはならない。これを怠ると、法令に触れることになる。そこで大島さんは一案を講じて、極力「自動化」を進めた。
現場が入力し忘れると「消える」仕掛け
現場担当者が最新情報を入れ忘れると、サイトからその物件の表示が消えるというシステムにしたのだ。
サイトというのは、ユーザーの利便性を中心に作られることが多いが、意外に重要なのは運用ルール。それをおろそかにすると、ユーザーの利便性まで損なう。
大島さんはそれを見越して、サイトの制御を始めた。「それって、今でいうCMS(コンテンツマネジメントシステム)ですよね。最初からCMSを導入したサイトは聞いたことがない」と私が指摘すると、「情報システム部門にいたら、分かることだよ」と大島さんはこともなげに言う。
宣伝部にデジタルメディア室ができたのは、2007年1月のこと。所属が宣伝部になる前から、イントラネットにあるプログラムを使ってHTMLを生成、それをサーバーにはき出すなど、大和ハウスのサイトは「高度なシステム」である。
一般的に言って、ウェブ運営の問題は、部門間の協力がないことだ。大和ハウスでは、情報システム部門にウェブチームを残して、月に2回宣伝部と合同ミーティングを開いている。
だから、ウェブはIPアドレスで管理され、行動履歴を反映した動的なサイトになっている。ユーザーニーズと運用ニーズのバランスも担保されている。
