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 サントリーホールディングス広報部デジタルコミュニケーション開発部長の坂井康文さんは、情報システム部で、そのキャリアをスタートさせた。

 同社は1995年にホームページを広報部主管で開設したが、その翌年には管轄を情報システム部に移した。坂井さんは、そのウェブ担当者とたまたま席が隣だったことで、「やけに面白そうな仕事だ」と思い、積極的にその仕事を手伝っていた。

 転機が訪れたのは97年、ウェブ担当者が退職し、「じゃあ、坂井が引き継げ」ということになった。やってはみたものの、広報の経験はなく、コミュニケーションスキルにも自信がない。

 そこで上司に相談し、広報・宣伝・お客様センターの3部署を巻き込んで、インターネット委員会を作ってしまった。

 これは会社の正式な組織ではない。みんなが悩んでいたから、知恵を出し合い解決しようと考えて、週1回の割合で、早朝に集まった。

自主的に「インターネット通信」を発刊

 99年には情報システム部に専門部隊ができたが、まだ足りない、会社全体への求心力を持たせたいとの思いで、坂井さんは「インターネット通信」を発刊。役員から現場のメンバーまで、勝手に受信者を決めて、ホームページの更新情報からネット業界のトピックス、同業他社の動きを伝え続けた。やがて、「私にも送ってほしい」という依頼や各部署からの相談が増えた。

 2003年には再び、ウェブを広報部に移管。同部がデジタル全体の戦略を立てるために、ブランド別のマーケティング担当者との仕事が始まった。2005年には情報システム部にもデジタルマーケティングの基盤を構築するチームができた。

 デジタルとなると、ツールやインフラの開発が必要で、各製品のマーケティング本部はその構築に時間を取られることもしばしばだった。そこでIT部門がアプリケーションの構築など基盤整備を開始。これでマーケティング部門は本来の仕事に専念できるようになった。

 サントリーは「マーケティングが強い会社」として知られている。これは社内外のニーズをくみ取りながら、各部署と信頼関係を築いているからである。

 坂井さんは「インターネット革命とは、マーケティングコミュニケーションの在り方に変革を迫る。そればかりでなく、将来的にはビジネスの進め方や組織も変えてしまう。サントリーにとっても他人事ではない」と指摘する。

 デジタルは、まだマーケティングのツールと見なされているが、やがて経営能力を全て映す鏡になるだろう。


石黒 不二代(いしぐろ ふじよ)
石黒 不二代(いしぐろ ふじよ) ネットイヤーグループ社長兼CEO。名古屋大学経済学部卒業後、1981年ブラザー工業に入社。米スタンフォード大学でMBA(経営学修士)を取得。米シリコンバレーでコンサルティング会社に勤務し、99年にネットイヤーグループの設立に参画。2000年から現職。