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ある事業を始めようとするとき、周囲が反対したり、顧客からあまりいい反応が得られないことがあります。そのとき、その事業を続けるべきか、軌道修正すべきか。ブランク氏の答えは、反対意見を打ち負かすほどの創業者の「狂信」だと言います。(ITpro)

「あなたの時間は限られています、だから、他人の人生を過ごして時間を無駄にしてはなりません。人の考えの結果で生きるドグマ(独断)にはまってはなりません。他人の意見の雑音によって、あなたの内面からの声を殺してはなりません。そして最も大切なのは、自分の心と直感に従う勇気です。それらはあなたが本当に何になりたいかを知ってます。他のことは二次的なのです」――2005年のスタンフォード大学卒業式におけるスティーブ・ジョブズ氏のスピーチから。

 先週、メンターの一人が、リーン・ローンチパッドクラスの1チームのコーチを突然辞任しました。彼が現場で培った現実的なアドバイスや長年の経験を、学生たちが無視したからというのが辞任の理由でした。

 彼のその反応によって今一度思い起こされたのは、なぜアントレプレナーシップがアートであり、なぜベンチャーキャピタル(VC)は複数の会社のポートフォリオを管理する存在であり、なぜ現状維持を良しとしない人たちから新しいアイデアが出てくるのかということでした。

私はその分野の専門家なんだよ!

 私たちは、学生チームに経験のあるメンターを任命します。このクラスでは、今回の組み合わせが完璧にみえました。熱意に燃えた(非理性的な)創業者と、該当分野で2社の運営経験があり、バーティカル市場用のソフトウエアを開発し販売したことがあり、この分野を専門分野として学術的に研究したことがあるメンターの組み合わせです。神の思し召しによるパートナー――そううまくはいきませんでした。

 メンターは、この種のサービスを運営するにあたって注目すべき現実の運営データと、直面する規制障害にチームの注意を向かせようと最善の努力をしました。メンターはチームの考え方に否定的で、チームにピボットするように強く提案していましたが、創業者は自分の考えを貫こうと心に決めていました。

 その結果、メンターは辞任したのです。

 これは難問です。長年の経験を持っているメンター(あるいはVC)が「それは良くないアイデアだ」と言っている場合、創業者であるあなたは、どうしたらよいのでしょうか。

あなたは十分に狂信的でしょうか?

 顧客と経験のある人たちが「それは成功しない」と言った場合、私がクラスのチームに薦めるのは、現実のスタートアップ企業に推薦する内容と同じです。

1.それでもあなたは、そのアイデアを信じるほど狂信的でしょうか?

2.オフィスの外に出て顧客と会い、あらゆる否定的なコメントを聞かされてもなお、あなたのやり方を説明することができますか?

3.それは世の中を変えるほどの試みであり、そこに到達するまでの苦労と苦痛に値するものですか?

 もしそうなら、他からの声は無視してください。世の中は反体制派のおかげで進歩します。反対意見がなければ創造性は存在しないのですから。情熱や粘り強さ、機敏さを備えた、現状維持に対する健全な不敬が、全てを打ち負かす切り札になるのです。

2013年2月19日オリジナル版投稿、翻訳:山本雄洋、木村寛子)

スティーブ・ブランク
スティーブ・ブランク  シリコンバレーで8社のハイテク関連のスタートアップ企業に従事し、現在はカリフォルニア大学バークレー校やスタンフォード大学などの大学および大学院でアントレプレナーシップを教える。ここ数年は、顧客開発モデルに基づいたブログをほぼ毎週1回のペースで更新、多くの起業家やベンチャーキャピタリストの拠り所になっている。
 著書に、スタートアップ企業を構築するための「The Four Steps to the Epiphany」(邦題「アントレプレナーの教科書新規事業を成功させる4つのステップ」、2009年5月、翔泳社発行)、「Startup Owner's Manual」(邦題「スタートアップ・マニュアル」、2012年11月、翔泳社発行)がある。