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 なぜ日本では“動かないコンピュータ”が量産されるのか。なぜ失敗だと分かっていても後戻りできないのか。“システム屋”歴30年以上、IT業界を知り尽くした佐藤治夫氏が問題に切り込む。ITproで人気を博した連載コラム『ダメな“システム屋”で終わりますか?』以来の1年3カ月ぶりに、佐藤氏の寄稿を4回にわたって掲載する。(ITpro編集部)


 この特集では、日本のIT業界になぜか根付いてしまった「ウオーターフォール・モデル」「ウオーターフォール型開発」について、改めて問い直してみたいと思います。

 私を含む日本のITベンダーやシステムインテグレーター、コンサルティング会社の従業員、ユーザー企業のシステム部門担当者たちを、ここでは“システム屋”と呼びます。私は、大学卒業以来30年以上にわたって“システム屋”をやってきました。その経験から、こう考えるのです。

 「良い意味でも悪い意味でも、ウオーターフォール的な思考パターンが、日本の“システム屋”を規定している」と。

後戻りしないのは本当に良いこと?

 滝の水は上から下へと流れて、決して逆流することはありません。滝と同じように、ソフトウエア開発において、前工程から後工程へと整然と作業が流れ、決して手戻りしないように考えられた開発方法論がウオーターフォール・モデル、あるいはウオーターフォール型開発と呼ばれるものです。一方で、最近では「アジャイル開発」のように非ウオーターフォール型の開発手法も使われるようになりました。

 私は、ウオーターフォールと非ウオーターフォールの優劣を比較したいわけではありません。1970年代以降、日本の情報サービス・IT業界の右肩上がりの拡大や“システム屋”の増加・成長を振り返ってみると、ウオーターフォールモデルの普及と同期しているかのようです。

 ウオーターフォールがIT業界の産業構造を規定し、個人の成長の阻害要因や撹乱要因にもなっています。ひいては情報システムを導入・活用するユーザー企業の成長にとっても短所が目立ち、“動かないコンピュータ”“使われないコンピュータ”が量産されることになってしまっています。これが結果として、我が国全体の競争力を阻害しているのではないでしょうか。