電通国際情報サービス(ISID)やDTS、キヤノンITソリューションズといった売上高数百億円規模の中堅ITベンダーが、タイやインドネシアといったASEAN加盟国で次々と拠点を構え始めている(表1)。現地の日系企業により密着したサービスを提供することが主な狙い。製造業の間で中国からASEANへと、アジア戦略を見直す動きがあることも追い風となっているようだ。
ISIDは2013年4月にインドネシアで現地法人を新設。タイ拠点も2009年5月に販売不振で活動停止して以来、およそ4年ぶりに営業を再開する。従来はシンガポール拠点から営業担当者や技術者が両国に出張していたが、より迅速な対応が可能になる。シンガポール、タイ、インドネシア3カ国の合計で、2016年3月までの3年間に10億円の売り上げを目指す。
現地の日系企業にISIDが売り込むのは設計支援ツールのほか、工場内のレイアウト最適化ツール、部材の投入計画など生産プロセスを自動最適化するツールなどだ。これらの販売が「今後3~5年伸びる」と海野慎一執行役員グローバル事業推進本部長は話す。
海野執行役員によると、特に自動車業界では生産だけでなく、設計拠点もタイなどに移す動きが始まっている。現地の市場に合わせて、部品や製品を柔軟かつ素早くカスタマイズするためだ。消費市場として期待の大きいインドネシアでも、日系企業が生産拠点を新設する動きが盛んだという。
ISIDは流通・小売業向けのソリューションも現地で売り込んでいく方針。同地域でマーケティング事業などを展開中の親会社、電通との協業で、CRM(顧客関係管理)や販売動向分析機能を持つ「iPLAss」の拡販に取り組む。
拠点拡大に先立ち、ISIDはリスク管理体制を強化。プロジェクト管理を全社横断で担う「PMO委員会」が国内案件だけでなく海外案件も管理する体制を整えた。
DTSやキヤノンITソリューションズ、日商エレクトロニクスも、ASEAN地域に相次いで進出している。DTSは2013年3月に初のASEAN拠点をタイに設立するのに続き、2013年度(2014年3月期)中にベトナムやシンガポールでの拠点新設も視野に入れている。
日系企業向けビジネスを念頭に置いた進出が目立つなか、現地資本の事業者をターゲットとしているのが日商エレクトロニクスだ。2012年10月にインドネシア拠点で現地の大手通信事業者7社などへの営業を開始した。伝送網やIP網の構築、ネットワーク機器販売の受託を目指しており、2013年2月現在で、数件を受注済みという。