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 基礎自治体である市町村には、厳しい財政事情の下で業務効率化や行政サービス拡充への要求が高まっている。当時の全国最年少市長として31歳の若さで就任した熊谷俊人千葉市長は、自らCIO(情報統括管理者)に就き、ICTの活用による業務プロセス改革を推し進めている。基礎自治体でのICT活用のあり方や課題を聞いた。(聞き手は本誌編集長、井出 一仁)

市長就任後にCIOを設置し自ら就いた背景や理由は。

熊谷 俊人氏
千葉市長・CIO(情報統括管理者)
熊谷 俊人氏
写真:佐藤 久

 市長に就任して、ICTを市政全体にスピーディに反映していくにはCIOが必要だし、予算確保や他局への指示のためには少なくとも最初はトップダウンでやらなければならないと考えました。CIOを補佐する情報政策課も、関連部署を集め情報統括部へと格上げしました。

 ICTで市政の全体最適化を実現するには、各部署の業務を多かれ少なかれ変えてもらう必要があります。そのとき組織の中でのパワーは非常に重要です。ボトムアップでは難しい局面が多くなってしまいます。

CIOとして注力していることは。

 一つは、レガシーシステムの刷新です。住民系のシステムがすごく古く、業務を革新しようにもシステム上の制約や課題が多くありました。加えて、古さゆえにブラックボックス化していたり、国の制度変更に対応するための改修コストも高くついていました。

 レガシーシステムのオープン系への移行は2012年度に計画に着手し、13年度から本格的に始めます。介護保険、税務、福祉、住民記録、国民健康保険などのシステムを5年計画で置き換えます。レガシーの刷新は自治体では最後発のグループになりましたが、サーバー仮想化やIaaS注1)などによるプライベートクラウドを活用できる環境になったほか、ほぼ同時期に運用が始まるマイナンバー制度に対応させられるのは大きなメリットです。

システムの刷新で、どんな改革を実現できますか。

 例えば区役所窓口の改革では、ワンストップサービスを提供する総合窓口や、プッシュ型の情報提供サービスを実現していきます。

 市民は区役所に来るたびに自分や家族の情報を書き、市民課で書いたのに保険課でまた書かされたりとか、手続きに手間と時間を取られています。また今の行政サービスは「申請主義」なので、制度を知って申し込まないと利用できません。

 ICTを活用し役所の業務や窓口が変われば、市民に「便利になった」「こんなサービスがあったんだ」と感動してもらえるようになります。子どもの予防接種なら、住民系の情報と突き合わせれば対象者はすぐに分かります。本人の同意を得た上で、支援サービスを対象者にピンポイントでお知らせできるようになります。

 こうしたプッシュ型サービスはマイナンバー制度でも想定されていますが、制度が対象にしていない分野でも市民の承諾を得ながら拡張していきます。マイナンバーは市民一人ひとりを見分けて向き合えるツールであり、役所体質・縦割りといった批判に応える有力なキーです。市民に便利さを実感してもらうには、基礎自治体が頑張るしかありません。