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◆今回の注目NEWS◆
住基ネット障害の原因は「文字化け」、231市町村に影響
(ITpro、4月3日)
◆このNEWSのツボ◆

 住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が、システム更新の際のプログラムの不備で発生した文字コードの間違いにより、200以上の自治体で利用できなくなったようである。

 報道だけ見ると「なんとお粗末な・・」という印象もなくはないが、実は私たちシステムに携わる人間が見ると、割とおなじみの障害であることも事実だ。文字コードの問題が結構面倒なものであることは、下記の記事が参考になる。文字コードには様々な種類が存在し、アプリケーションの開発に際して使用されている文字コードが違っていたり、あるいは標準の文字コードにない文字(例えば人名漢字や地名漢字)に外字コードを割り振ったりすることは日常茶飯事のように行われている。
 (参考記事)文字コード規格の基礎

 ところが最近、システムを連携させてデータのやり取りや共有が日常的に行われるようになってくると、「A」というシステムで使用されている文字コードや外字が、「B」というシステムで使用されていないとシステム側がその情報を認識できない。その結果、システムエラー、あるいはデータエラーが発生することがある。

 今回の住基ネットの障害では、市町村の住基システムの中継用サーバーから都道府県にある住基ネットのサーバーに送信される文字コード自体が誤っていたようであり、文字コードの相違に起因するトラブルではないようだ。しかし、仮に正しい文字コードが送信されていた場合であっても、その先に住基ネットのデータを利用するアプリケーションが稼働していて、双方のシステムが使用する文字コードが相違しているような場合には、システムトラブルが発生し得るのである。

 住基ネットの場合には、幸か不幸かこれと連動して動いている業務アプリケーションは多くはない。しかし、現在検討中のマイナンバー(社会保障・税の番号制度)のシステムでは、行政機関のみならず、将来の民間利用も含めて多くのシステムで共通に利用されることが想定されている。

 住基ネットにしろ、マイナンバーにしろ、そこに含まれている情報には個人の氏名や居住地に関する情報など、標準の文字コードセットではカバーしきれない情報を含んでいるはずである。それがさらに他の業務システムとも連携してくるとなると、「ちょっとしたうっかりミス」が政府関係の多くのシステムだけでなく、これを利用する民間システムの障害・停止を招くといった事態にもなりかねない。行政サイドでも注意深い対応が必要になることを、今回のトラブルは教えてくれたのではないか。

安延 申(やすのべ・しん)
SGシステム 代表取締役社長、
スタンフォード日本センター理事
安延申
通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。フューチャーアーキテクト社長などを経て、現在はSGシステム代表取締役社長、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。