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「究極の指標」を採用したアメックス

 大手クレジットカード会社のアメリカン・エキスプレス・インターナショナル(アメックス、東京・杉並)もこうしたCSの課題に突き当たっていた。「世界で最も信頼されるサービス・ブランドになる」というビジョンを掲げる同社では、長年にわたってグローバルに大規模なCS調査を行い、サービスへの満足度や継続利用意向を聞いてきた。

 しかしその結果と業績は必ずしも連動していなかったという。「顧客満足度が高くても末永く顧客でいてくれるとは限らない。継続意向が強くても実際にカードを使う頻度はなかなか増えないケースもあった」とアメックスの個人事業部門マーケティング部の三木若葉部長は打ち明ける。

 こうした課題を解決するKPIとして同社が採用したのが「NPS(ネットプロモーター・スコア)」。顧客に対し、自社の商品やサービスを「友人や知人に奨めたいと思いますか」という質問をし、「非常にそう思う」から「全くそう思わない」までを0から10までの11段階で評価してもらう。0~6までの評価をした人を「デトラクター(非難者)」、7と8の評価をした人を「ニュートラル(中立者)」、9と10の評価をした人を「プロモーター(推奨者)」とし、回答者全体に占めるプロモーター比率からデトラクター比率を引いたものをNPSとして定義する。

 NPSを開発したのは米コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーなど。同社では約30年にわたって、様々な企業で顧客ロイヤルティーと業績との相関を調査してきた。膨大なデータの分析から業績との連動が証明されたKPIが、NPSだ。

 NPSがよりどころとする「人に奨める」という行為は、企業ブランドや商品に対する強い信頼や愛着がなければ生まれない。プロモーターと定義される顧客は「浮気」の心配がほとんどなく、クチコミによる新規顧客拡大効果が大きい。新規顧客開拓のための販促活動や、顧客の離反防止にかかるコスト削減にもつながる。

 アメックスではこう判断してグローバルでNPSを採用。日本法人でも2007年から試験導入を始め、2010年からは正式採用。部門評価にも反映させている。

 業績に結びつくKPIとはいえ、導入当初は社員も当惑した。「なぜ9か10を取らないとプロモーターとして定義されないのか」「中間値に集中しがちな日本は、ほかの国に比べて不利だ」といった不満が少なくなかったという。

 1つの指標に「賭ける」不安を取り除き、NPSを浸透させたのが、ロバート・サイデル社長のリーダーシップだった(写真1)。「信頼する人からのクチコミほど強力なものはない。NPSが上がれば結果は必ずついてくる」とサイデル社長は各部門を回って社員に説いた。さらにNPSの解説書を全社員に配布して読書会を開き、NPSの理論的な背景を理解させていった。NPSを開発したベイン・アンド・カンパニー・ジャパンの森光威文パートナーは「トップの関与が不可欠。アメックスはそれを徹底したから成功した」と話す。