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 米ヤフーが社員あてに在宅勤務を禁止する通達を出して話題になっている。現状は「自由に働く」というと、どうしてもIT(情報技術)をフル活用した在宅勤務が思い浮かぶが、決してそれだけではないだろう。重要なのは、社員の意欲を引き出しつつ、いかに成果を高めるかにある。

 「ポスト・イット」で馴染み深い住友スリーエム(住友3M、東京・世田谷)には、独特のルールがある。それが総勤務時間の15%は、会社から与えられたテーマ以外に使ってもいいという「15%カルチャー」。就業規則に記載はなく、上司への報告義務もない。

 狙いは、技術者の“遊び心”を刺激し、革新的な商品やサービスを生み出すことにある。総勤務時間の15%の範囲内であれば、失敗を恐れずに、中長期的なテーマに挑戦できる。15%カルチャーは「失敗を許容する文化」の醸成に、一役買っているといえる。

技術者がフォーラムを自主運営

 15%カルチャーで技術者のチャレンジ・スピリットに火をつけるだけではない。約500人の技術者が参加する「テクフォーラム」で、技術者同士の連携も強めている。

 テクフォーラムの特徴は自主運営であること。経営陣はお金は出すが、口は一切出さない。活動内容は多岐にわたっており、相模原事業所(神奈川県相模原市)と本社で技術交流会を開いたり、様々なテーマで勉強会や研修セミナーを開いたりしている(写真)。メンバーの1人である松本日出夫技術本部カスタマーテクニカルセンター(CTC)センター長は、「テクフォーラムの運営に相当のエネルギーを使っている」と話す。

 15%カルチャーとテクフォーラム。住友3Mはこの2つを技術戦略の両輪に、イノベーションを促している。実際に新製品の開発案件も出始めた。2012年に販売を始めた“曇らないゴーグル”「SF100」。これに使うコーティング技術を技術交流会で発信したことで、「別の商品にも使える」という動きが生まれたのだ。各事業部や研究開発部門のメンバーが集まり、曇らない眼鏡の開発に取り組んでいる。

 耐久性の問題で、すぐに“新メガネ”の発売とはいかない。松本センター長は「(自分も眼鏡をかけているので)早く開発してくれないかな」と笑う。とはいえ、テクフォーラムが“接着剤”の役割を果たし、着実に技術者同士の横連携は強まっている。住友3Mは今後も、15%カルチャーとテクフォーラムを軸に、常識を超える商品やサービスの開発に取り組む。

写真●住友3Mの技術交流会の様子。技術者の連携を強める重要なイベントになっている