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 たまたま見かけた写真に、情報システムのアーキテクチャーを見た気がした。

 その写真は温泉宿の建物だった。増改築を繰り返したのか素人目に見ても不自然な外観である。中を歩いていると迷子になりそう。きっと使いにくいだろうし、メンテナンスも大変だろう。そのとき、これは「アーキテクチャーが崩れてしまった情報システムを見ているようなものだ」と思い至った。

 その温泉宿のオーナーも好んであんな建物にしたわけではないと思う。もっと“美しい”建物にしたかったに違いない。推測にすぎないが、部屋数を増やして売り上げ増に結び付けようとしたが、大型の投資はできず、少しずつ投資して建物を増改築したことが考えられる。

 間違った判断ではない。だが、結果として完成した建物を見れば、「なんでこんなことをしたの?」とネガティブな指摘をしたくなる。

 情報システムは目に見えないので分かりづらいが、筆者が見た温泉宿と同じようなことになっているものが少なくないのではないか。いうならば“増改築温泉宿システム”だ。そうしたシステムの利用者は「使いにくい」と感じていることだろう。いい迷惑だ。

 もっと強くそう思っているのは、運用・保守の担当者であることが容易に想像できる。機能追加や改修のリクエストを受けたとき、そのリクエストに応えようとプログラムを修正する。場当たりとはいわないが、部分的な改修を繰り返した結果、「なんでこんなメソッドがあるんだ?」「なんでこんなコードになっているんだ?」と、疑問に感じることが増えてくる。現場は大変だ。

 どうすればいいのだろうか。建物の話になってしまうが、歴史のある有名な寺院や城は今見ても美しい。「建立当時のままだからだ」との指摘もあるだろうが、当時のまま残そうとしたことにこそヒントが隠されていると思う。

 「この建物はこうあるべきなんだ」。後世の人がみんなそう思えば、その建物は美しいまま残される。翻って情報システムでも、「このシステムはこうあるべきなんだ」と、後からシステムに関わる人が思えるかどうか、ということがポイントになる。それは一般に「アーキテクチャー」と呼ばれるものだ。

 情報システムを構築する際、後からそのシステムに関わる人が「このシステムはこうあるべきなんだ」と思えるようにしなければならない。そう思ってもらえれば、機能追加や改修をする際、「このシステムにはこうやって機能を追加すべきだ」「このシステムはこうやって改修すべきだ」と考え、“増改築温泉宿システム”にならずに済むのではないだろうか。

 平凡な言い方だが、やっぱり、情報システムのアーキテクチャーは大切だ。設計・開発に携わるエンジニアは、もっともっとアーキテクチャーを意識してシステムを作る必要がある。運用・保守の担当者は、アーキテクチャーを維持し続ける努力をしなければならないと思う。

 一番期待したいのは、アーキテクチャーの設計と維持に責任を持つエンジニア(=ITアーキテクト)が増えることだ。これまで「ITアーキテクト」と名乗る人は少ないという印象だが、もっと増えてほしい。