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 2013年3月期決算や今後の動きについて、SMBC日興証券 株式調査部の菊池悟シニアアナリストに聞いた。「今後、緩やかに景気回復するだろうが、ユーザー企業のIT投資は急激に増えない。むしろ需要を自分たちで創り出すだけの意欲が求められる。ITサービス会社の経営者には、新しい事業形態に向けて自らの経営資源を再配置するだけの覚悟が必要になる」と語る。


今回の決算をどうみるか

写真●SMBC日興証券 株式調査部シニアアナリストの菊池悟氏
写真●SMBC日興証券 株式調査部シニアアナリストの菊池悟氏

 緩やかな回復といえる。ようやく景気の底から脱出できそうだ。平均株価が上がっており、13年後半に向けて、ユーザー企業のIT投資意欲の向上に期待している経営者の気持ちが伝わってくる。しかしだからといって、IT投資が急に増えるとは思えない。

 どのような成長戦略を描いているのか、決算発表で各社の経営トップからはっきりと聞きたかった。景気が回復すれば需要が増えてIT投資も増えるかもしれないが、それだけでは景気の波に翻弄されるだけで今までのビジネススタイルと変わらないだろう。

 ITサービス業界は、これまで受身のビジネススタイルだった。今後は自分たちで新しいITサービスを提案するなど、需要を自分たちで創り出さないといけない。現状のままでは、なかなか新しいビジネススタイルへ脱却できない。

 なぜユーザー企業はIT投資すべきなのか、経営を効率化したり、新しい事業に乗り出したいからであって、IT予算に余裕があるからではない。ITサービス会社も新しい事業に積極的に挑戦すべきだ。せっかくのクラウドビジネスも、今のままでは単なるデータセンター活用にとどまっていると思う。ビッグデータによるシステム構築でも、結局は既存システムの延長線の提案しかできないのではないか。

ITサービス会社にも変革が求められる、ということか。

 そうだ。ITサービス会社は、ここ数年の低迷期にこそ、新規事業にもっと人材を振り向けるべきだった。このままでは、たとえ需要が増えたとしても、ITサービス会社は対応できるのだろうか。

 既存事業の強化は重要かもしれないが、それだけでは成長できない。人手が余っていたときこそ、ITを使った新しいビジネスを自分たちで創り出したり提案したりパートナーになったりすることで、需要を開拓するチャンスだったはずだ。既存の大型案件をうまくこなす人材ばかりではなく、新しいビジネスを創造できる人材の育成が必要だった。

海外市場を積極的に開拓しようとしているが。

 海外展開を強化するITサービス会社は少なくないし、重要なことは間違いない。しかしまず国内市場を固めるべきではないか。日本から逃げず、足元からIT活用によるイノベーションを提案していくことが求められる。国内市場にはまだまだ開拓の余地がある。

 景気が上向けば、もっと多くのプロジェクトが出てくるかもしれない。既存のやり方でもここ1~2年は安泰かもしれないが、その先はどうなるのか。また、これまでの繰り返しになるのでは意味がない。

 今からでも遅くはない。ITサービス会社は社内の経営資源の再配置を真剣に考えるべきだ。次の景気の山に向けて成長戦略を描き、自社の立ち位置を明確にしなくてはならない。社内改革といっても、コストカットするしかない企業では、自社を成長させようという意識が感じられない。