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 既存のソフトウエア工学とアジャイル開発のような最近の手法を融合させ、現場で使える新たな知識体系を作る。こうした目的で活動する国際組織「SEMAT(Software Engineering Method and Theory)」が2013年4月末、日本支部を立ち上げた。SEMATの考え方の普及・啓蒙を進めるほか、日本ならではのソフト開発の工夫・ノウハウなどをSEMATに提案していく。

 SEMATは特定の方法論に依らない、ソフト工学の新たな知識体系の確立を目指す()。ウォーターフォール開発に代表される既存手法の良さと、アジァイル開発など最近の手法の良さを併せ持つ体系を志向しているのが特徴だ。

図●既存のソフト工学とアジャイル開発の融合を目指す「SEMAT」
図●既存のソフト工学とアジャイル開発の融合を目指す「SEMAT」
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 「要求」や「ステークホルダー」といった一般的なソフト工学の概念に加えて、「チーム」などアジャイル開発が重視する概念をカバーする。繰り返し型で開発する「イテレーション」や、チームの状況を日次のミーティングで情報共有する「朝会」のような、アジャイル開発の工夫やプラクティス(知見)を個別に開発に取り入れやすくすることを狙う。

 さらにSEMATは、現場で実際に使える知識体系を目指す。既存のソフト工学の知識体系「SWEBOK(Software Engineering Body of Knowledge)」が膨大な知識を整理した網羅的な体系であるのに対し、SEMATでは少数の本質的な知識に絞り込み、現場で活用しやすくする計画だ。

 日本支部エグゼクティブコミッティーの代表を務める、早稲田大学情報理工学科の鷲崎弘宜准教授は、「たまに引く辞書のような知識体系でなく、日々の開発で使ってもらえるものが目標」と話す。知識体系は書籍だけでなく、アジャイル開発でよく使う「カード」のような形態で配布することも想定しているという。

 SEMATが発足したのは2009年9月。オブジェクト指向による開発でよく使われる「UML(統一モデリング言語)」の提唱者の一人であるイバー・ヤコブソン氏が主導する。

 SEMATは活動の第一段階として、個々のプラクティスや方法論を表現するためのモデリング表記法「エッセンス言語」を開発してきた。この活動が一段落し、「より実践的な知識体系の構築に軸足を移そうとしている」(鷲崎准教授)。今後は「オフショア」「保守開発」などソフト開発の領域(ドメイン)ごとに、エッセンス言語を使ってプラクティスや方法論をまとめていく活動が中心になるという。日本支部は、日本のニーズに合うようなドメインを取り上げる予定だ。