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 前回指摘したように、マーケティング・オートメーションが日本で普及するうえではまだ課題もあるものの、今後数年間で大きく成長していくことになるだろう。グローバルITベンダーによる専用ツールベンダーの買収や企業向けクラウドツールのさらなる普及、スマートフォン利用の定着などがそれを後押ししていくとみられるからだ。

 ここ数年、グローバルなITベンダーが、マーケティング・オートメーションの専用ツールベンダーを統合する動きが起こっている。2010年にIBMがUnicaを買収したのを皮切りに、テラデータがAprimoを、2012年末にはオラクルがEloquaをそれぞれ買収した。

 こうした動きは日本のユーザー企業にも影響を与えそうだ。従来は、個人情報保護やセキュリティの観点から、知名度のないツールベンダーにデータを預けることに躊躇してきた企業もある。大手ベンダーの傘下に加わったことで、そうした懸念無く、マーケティング・オートメーションのツールを導入できるようになる。大手ベンダーの既存製品のオプション機能として提供される可能性も高くなった。

クラウド化でCRMと連携

 導入を促進するもう1つの要因は、クラウド化の進展だ。

 総務省発行の平成24年度情報通信白書によれば、大手企業の約4割が既に何らかのクラウドツールを利用していると言う。また、東日本大震災を受けて、クラウドツールを利用する方向で検討を進めることになった企業は半数を超えており、企業向けアプリケーションのクラウド化の傾向はますます強くなっていくだろう。

 これまでの企業向けクラウドツールと言えば、グループウェアや電子メールなど業務系アプリケーションが中心だったが、今後は顧客情報管理系、いわゆるCRMシステムのクラウド化も進展するとみられる。そうした流れのなかで、CRMのクラウドサービスがマーケティング・オートメーションのオプションを備えたり、2つのクラウドサービスを連携して提供するサービスが登場したりする可能性がある。ユーザー企業が個別にマーケティング・オートメーションツールを導入するよりは、難度もコストも下がることが期待できる。

 こうしたベンダー側・ツール側のダイナミズムだけでなく、企業と消費者との接点の変化も見逃せない。これを惹き起こしているのが、新たなモバイルデバイスの台頭である。

 国内スマートフォン普及率は2013年初頭で約4割を超えた。20代では既に6割を超えている。この高い普及率はマーケティング・オートメーションを促進する要因となりうるだろう。

 第一に、メールやウェブサイトなどにおける消費者と企業とのデジタルな接点が大きく変化してきているという点だ。「メールチェックやインターネットでの購買は、家や会社のPCで時間がある時に…」といった状況から、「いつでもどこでも気が向いた時に」へと変わってきている。

 ネットとの接点が増えるからこそ、シナリオに即して次々と「次の手」を打つことで、短時間で「買う気」を高める効果が期待できる。例えば、メルマガに掲載されていた商品に興味を持ち、サイトにアクセスした顧客がいるとしよう。「今なら2割引!」というメールを送れば購入を後押しできる。

 ところがこれまでは、顧客が次にパソコンを開くまで、そうした「次のアクション」は打てなかった。その期間が長ければ、購買意欲は低下している可能性が高い。他に興味の対象が移っているかもしれない。

 一方、接触頻度の高いスマホなら、「買う気」が冷めないうちに次の手を打つことができる。「いつ買うか、今でしょ」と背中を押せるわけだ。だからこそ、自動でシナリオを実行するマーケティング・オートメーションが役立つ。

 第二に、GPSやネットワークから取得できる位置情報など、これまで取得できなかった新たな顧客情報が入手できる可能性があるという点だ。これを利用して、店舗周辺にいる顧客だけにキャンペーンメールを配信したり、店舗で購入直後の顧客にすぐにお礼メールを送信したりといった、様々な施策が実現可能になる。この場合も、予めシナリオを作っておけばシステムが自動的に施策を実行してくれるマーケティング・オートメーションツールが効果的であることは言うまでもない。

2年後には5割に普及。

 ワン・トゥ・ワンマーケティングという概念は、古くから存在してきた。これまでは、その理想ばかりが声高に唱えられるものの、いざ実現となると膨大なコストが足かせとなって実行できなかったり、実行してもコストに見合う効果が得られなかったりするのが現実だった。マーケティング・オートメーションの概念と手法は、ワン・トゥ・ワンマーケティングを大きく変えると見られている。

 米Focusリサーチ社の市場予測では、2010年に7-10%だったマーケティング・オートメーション導入企業の割合は、2015年には50%近くに上るとされている。企業向けアプリケーションのクラウド化やスマートフォンの普及などが、マーケティング・オートメーションの実現可能性と享受される恩恵を増幅していくだろう。

田島 学(たじま まなぶ)
アンダーワークス代表取締役社長
田島 学(たじま まなぶ)

早稲田大学政治経済学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て2006年4月にデジタルマーケティングのコンサルティング会社アンダーワークスを設立。