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 期待が高まるEthernetだが、車載用途で利用するには、(1)リアルタイム性、(2)フェイルセーフ、(3)導入コスト、(4)データ伝送速度の面で課題がある。中でも、リアルタイム性とフェイルセーフの課題解決が、車載での用途拡大には不可欠だ。

 民生用途のEthernetは、ベスト・エフォート型の通信で遅延時間の保証がない。そのため、リアルタイム性を確保しないと、制御系はもとよ り、情報系にも適用できない。フェイルセーフに関しても、障害からの復帰時間が「最大数十秒と掛かっては、車載用途での利用は難しい」(ある自動車メー カーの技術者)。

図1 ルネサス エレクトロニクスは、「人とくるまのテクノロジー展2012」でEthernet AVBを用いた実演を披露した。映像の伝送時に同じネットワーク内でパソコンとHDDでデータをやり取りしても、映像データを受信して再生した。一方、一般的なEthernetでは遅延が生じ、映像が乱れる。
図1 ルネサス エレクトロニクスは、「人とくるまのテクノロジー展2012」でEthernet AVBを用いた実演を披露した。映像の伝送時に同じネットワーク内でパソコンとHDDでデータをやり取りしても、映像データを受信して再生した。一方、一般的なEthernetでは遅延が生じ、映像が乱れる。
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 Ethernetは、7層あるOSI基本参照モデルのうち、下位にある物理層とデータリンク層の二つの層を規定する。このうち、主にデータリンク層の改善で、リアルタイム性の向上とフェイルセーフの確保を実現しようとしている。
 
 その動きの中心にあるのが、Cisco社やIntel社らが2009年に立ち上げた「AVnu Alliance」である。同団体は、高品質のオーディオ・ビジュアル環境を家庭だけでなく、自動車内でも構築するために「IEEE802.1 Audio/Video Bridging」(以下、Ethernet AVB)の採用を推進している。ここに自動車業界が着目し、車載用途に必要なリアルタイム性やフェイルセーフに関して議論を進めている。
 
 Ethernet AVBの現行仕様には、「IEEE802.1AS/Qat/Qav/BA」といった4項目の規格がある。これらにより、あらかじめ特定用途のため に通信帯域を確保する「帯域予約」や時刻同期、そして遅延時間を7ホップで2ms以下に抑えることを可能にする。
 
 既に車載の一部用途では、Ethernet AVBの現行仕様で実用水準を満たすという。例えば、7ホップで2ms以下という遅延時間は、「一概には言えないが、車載カメラ・システムやインフォテイ メント(情報系)の用途基準を満たしている」(ルネサス エレクトロニクス)とする。
 
 実際、同社はEthernet AVBのIPコアを試作してそれをFPGAなどに実装し、情報系での利用を想定した動作実演を実施して問題なく動くことを示した(図1)。 IEEE802.1Qatを使い、映像伝送用に帯域を確保し、映像伝送中に、他のデータ通信をネットワーク上で実行しても安定的に映像データを送信できる 様子を見せていた。
(続く)