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 車載用途での利用拡大に向けた課題のうち、導入コストとデータ伝送速度に関しては、物理層で解決する動きが活発化している。

 導入コストの中でも、ケーブル・コストの削減が、焦点の一つになっている。現在のOBD用途では、自動車を停止した状態で、外部のパソコンと接続して故障診断を実行する。このとき、「カテゴリ5」のような広く普及した安価なEthernetケーブルが用いられている。

 これに対して、自動車のカメラ・システムや映像伝送系、制御系、バックボーンでは自動車の動作中にもEthernetを用いる上、ケーブルを車体内に張り巡らさなければならない。その際、従来のEthernetの伝送技術では「思いのほか、輻射される電磁雑音が大きい」(ある自動車メーカー)とされ、シールド付きケーブルの利用が前提となってしまう。これでは、「コストが高くなる上、ケーブルが太くなることから、実装スペースや重さが増えてしまい利用に向かない」(複数の自動車メーカーや電装品メーカー)という。そのため、非シールドより対線(UTP:unshielded twisted pair)によるデータ伝送が強く求められている。

UTP1対で100Mビット/秒


 こうしたケーブルの課題解決しようと、物理層LSIを手掛ける企業が開発を進めている。Broadcom社や米Marvell社、米Micrel社などである。このうち、機先を制したのがBroadcom社である。

 同社は、車載Ethernetに向けに開発したデータ伝送技術「BroadR-Reach(ブローダーリーチ)」を使い、車載用途で求められる数十mの伝送距離において、UTP1対で100Mビット/秒を実現できるとしている。シールドが不要になるだけでなく、100Mビット/秒のデータ伝送速度でありながら、一般的な「100Base-TX」の信号線2対よりも配線を削減できることに、自動車業界が関心を寄せている。

 BroadR-Reach がUTP1対で100Mビット/秒を実現できるのは、シンボル速度を変えた上、1Gビット/秒の「1000Base-T」の技術を一部流用しているからである。

 100Base-TXや1000Base-Tのシンボル速度は125Mシンボル/秒なのに対し、BroadR-Reachは約66.7Mシンボル/秒である。これは、伝送路から生じる電磁雑音の周波数と、ラジオ放送の周波数帯との干渉を避けるためだという。これで、シールドを不要にできた。

 BroadR-Reachは100Mビット/秒ながら、通信方式に全二重方式を、変調方式にPAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス振幅変調)を利用するなど、1000Base-Tの技術を活用することで、信号線の削減につなげている。

 データ信号線だけでなく、電源線の削減も狙い、1対のUTPでデータ伝送と共に電力供給を可能にした。既に1対のケーブルで5W前後を供給できるという。カメラ・モジュール1個を駆動できる水準である。
(続く)