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写真●カブドットコム証券代表執行役社長 齋藤正勝 氏
写真●カブドットコム証券代表執行役社長 齋藤正勝 氏

 齋藤氏はシステム会社の運用担当者からスタートし、東証一部上場企業の社長まで上り詰めた。その原動力になったのは、日々学び続ける姿勢である。タイトルの言葉は、記者が日経コンピュータの編集長時代にインタビューした際に、若いITエンジニアにアドバイスを頂きたいと向けたときに出た言葉である(関連記事)。

 「今の知識は3~4年後には使い物にならなくなる。だから、1日30分、もっと言うと、1日5分でもいいから、自分の未来に投資する時間をとるべきです。自分もずっと続けてきました」と話してくれた。

 今でこそ、三菱UFJフィナンシャル・グループの社長会に出席するほどの成功を収めた齋藤氏だが、その道のりは決して平たんではなかった。それだけに説得力がある。

 筆者が齋藤氏に初めて会ったのは、日経Windows NTの副編集長だったときで、氏が第一證券(当時)のシステム部門で仕事をしていたころである。Windows NTを使ってオンライントレードのシステムを手作りで構築したというので取材させてもらった。当時、システムもさることながら、氏の経歴に驚いたのを覚えている。

 美術大学を卒業後、システム会社に補欠で入社するも、配属されたのは夜勤のオペレータ職。同期は皆、理系出身で情報処理関連の資格を持ち、SEとして採用されていた。氏もSEとして活躍したいというので、周囲の先輩に必要な知識を聞き、以来、空き時間を見つけて猛勉強し、資格を取得して3年がかりでSEになる。

 ところが頑張りすぎて病気でダウンして退職。再就職は困難を極めたが前職場の上司の推薦状で第一證券のシステム部門に入社したのだという。

 ここでも、最初はやりたい仕事を任せてもらえなかったが、皆が嫌がる支店へのパソコン導入を率先して担当することで、社内人脈を広げた。そして当時、大手証券会社がオンライントレードを始めたのを見て、経営企画部に提案。それが認められると、自らの手でシステムを構築した。

 この取材の後も、齋藤氏は決して順風満帆ではなかったが、システムに対する情熱は常に変わらない。

 第一證券は親会社の長期信用銀行と軌を一にして経営危機に陥ってしまう。そこで、齋藤氏はネット証券の可能性に賭け、1999年に日本オンライン証券を設立した。

 マイクロソフトにも出資を仰ぎ、自前のシステムを連日徹夜して作った。最初は悪戦苦闘したが、株式売買手数料の自由化の波に乗った。特に、自動売買のシステムを開発し、指定の株価まで下落したら売り、指定の株価まで上昇したら買う「逆指値」取引で成長した。

 今年4月、カブドットコム証券は従業員に対し、臨時ボーナスを平均30万円支給すると発表し、話題になった。個人による株式売買が増え、7期ぶりの増収増益を達成したためだ。ネット証券業界の競争は熾烈さをきわめる。「競合他社と違いを出すためにはシステムの内製化は必然。リスクを恐れずに、新しいことに挑戦していく。これからの経営トップはITに強くなければ務まらない」。

 齋藤氏はきっぱり言う。「ITに強い経営トップ」を自ら体現し続け、IT部門やIT企業に勇気を与えて続けてほしい。


桔梗原富夫
日経BPイノベーションICT研究所
 日経データプロ、日経コンピュータ、日経Windows NTの記者・副編集長の後、日経IT21、日経ソリューションビジネス、日経コンピュータの編集長などを務めた。2013年1月から、日経BPイノベーションICT研究所所長。