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写真●東京大学大学院情報学環 東京大学准教授 中尾 彰宏 氏
写真●東京大学大学院情報学環 東京大学准教授 中尾 彰宏 氏
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 現在のITで重要なものの一つがインターネットであることは論を待たない。そして、それを成り立たせているのがIP(Internet Protocol)である。これがなければ今や社会が成り立たない。

 ところが、既存のインターネットやIPと全く異なるネットワーク技術を目指した研究プロジェクトが、米国などで次々に立ち上がっている。とりわけ注目を集めるのが「MobilityFirst」だ。このプロジェクトは、既存のIPが有線ありきで設計されたものだと断じ、無線に最適なネットワーク技術の開発を目指している。

 当然ながら、こうしたまったく新しいプロトコルは、既存のルーターやスイッチで動かすことができない。

 そこで白羽の矢が立ったのは、東京大学大学院情報学環 東京大学准教授の中尾 彰宏氏が開発したプログラムブルスイッチ「FLARE」である(関連記事1)。FLAREは既存のルーターやスイッチでは不可能な処理を実現できるからだ。

 FLAREの設計思想を中尾氏は「データプレーンのプログラマビリティーこそが重要」と説明する。データプレーンとは、ルーターやスイッチといったネットワーク機器の中で、パケット(データをやり取りする基本単位)を転送する機能である。

 ここをプログラマブルに実装しておけば、既存の規格とは異なるヘッダー情報を定義し、それを処理することができる。例えば、48ビットのMACアドレスを2倍の96ビットに増やしたフレームの転送が可能になる。

 また、ヘッダー構造はIPv4のままで、アドレス長だけIPv6と同じ長さにしたパケットも FLAREであれば転送できる。

 さらにFLAREはヘッダー情報ではなく、データの中身を判断材料にして処理することもできる。「ヘッダーだけを見て処理をするというのはネットワークの発想で、アプリケーションからするとパケットの中にあるデータが重要」と中尾氏は指摘する。

 ところが既存のルーターやスイッチはデータプレーンを機器ベンダー固有のチップで実現しており、しかもIPやイーサネットに基づいた設計となっている。このため、その枠から外れた処理は不可能だった。

 プログラム可能なネットワーク技術として近年、期待されてきたのはOpenFlowである。しかしOpenFlowもIPの延長線上にある技術であり壁を突き破ることは難しいと中尾氏はみている。

 今のネットワーク技術はIPを前提にしており、「そこは変えてはいけない」という考えで作られている。しかし、中尾氏のFLAREによって、IPの殻を打ち破り、IPありきの発想に縛られない新しいネットワーク技術が生まれる可能性が見えてくる。

 今は想像も出来ない「ノンIPプロトコル」が生み出され、それを使って、インターネットを置き換えるような画期的なネットワーク技術が登場する日が来るかもしれない。


高橋健太郎
日経NETWORK/日経コミュニケーション
 日経マイクロデバイスを経て、日経NETWORKの創刊に参加。今特に興味を持っているテーマはITコンシューマライゼーション。