PR
写真●渡辺 明 竜王・棋王・王将(撮影:花井 智子)
写真●渡辺 明 竜王・棋王・王将
(撮影:花井 智子)
[画像のクリックで拡大表示]

 2013年3~4月にかけて開かれた、プロ棋士5人と5種類のコンピュータ将棋ソフトによる団体戦「第2回電王戦」(ドワンゴ主催)はプロ側から見て1勝3敗1分けという結果に終わったが、大いに話題となった。

 そうした中、第2回電王戦を観戦した第一人者の渡辺明竜王・棋王・王将は「コンピュータの視点は純粋ですね」と記者に語った。

 渡辺氏は将棋ソフトの指し手を冷静に分析していた。特に第5戦に登場した「GPS将棋」の序盤の指し手に感銘を受けたと話す。矢倉と呼ばれる伝統的な戦型のある局面で、約30年間変わらなかった評価を覆す手をソフトが指したからだ。

 「純粋な視点」とは人間のような先入観に邪魔されていないという意味である。将棋ソフトはハードウエアの演算能力を生かし、人間が読まずに切り捨てていた選択肢も含めて展開を読む。GPS将棋が人間が気が付かなかった手を指せたのはそのためだ。

 これに対し、人間は過去の経験や類似の局面を判断材料に、自分が有利になりそうな選択肢を絞り込んだうえで先の展開を深く読む。将棋の指し手の選択肢は局面ごとに膨大なものになり、すべての選択肢を検討することは、人間には事実上不可能だからだ。ただ、先入観に基づいた絞り込みによって読み間違いや読み抜けをしてしまうこともある。

 このコンピュータの純粋な視点を「これまで以上に将棋の研究に生かせるようになる」と渡辺氏は話す。今回のGPS将棋のように、コンピュータは人間に気付きにくい有力な手を指すこともあることが分かってきたからだ。

 序盤の研究においてもプロ棋士が腕を磨くための重要なパートナーにコンピュータはなったと渡辺氏は見る。「コンピュータに偏見を持っているプロ棋士もいたが、電王戦の結果を受けて大きく変わるだろう」。

 プロ棋士はこれまでコンピュータを終盤の局面で相手の王将を詰ませて勝てる手があるかどうかを検証させることに使ってきた。しかし序盤の研究は、対局の指し手を記録した棋譜を集めたデータベースを活用する程度にとどまり、コンピュータに先の展開を読ませて研究するという声はほとんど聞かれてこなかった。

 指し手の選択肢が広い序盤の場合、すべてを演算させると膨大な時間がかかって実用的ではないし、演算の時間を制限するとコンピュータは人間から見ると疑問手を指すことが多いという見方が強かった。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

日経クロステック登録会員になると…

新着が分かるメールマガジンが届く
キーワード登録、連載フォローが便利

さらに、有料会員に申し込むとすべての記事が読み放題に!
有料会員と登録会員の違い