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写真●CIツール「Jenkins」を開発した川口耕介氏
写真●CIツール「Jenkins」を開発した川口耕介氏
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 個人がなぜ、オープンソースソフトウエア(OSS)の開発に取り組むのか。リーナス・トーバルズ氏はかつて、Linuxの開発を始めた動機を「Just for fun(楽しかったから)」と語った。

 一方、「CI(継続的インテグレーション)」ツールのOSS、「Jenkins」の開発者である川口耕介氏は、その動機を「怒り」だと語る。川口氏の「怒り」が今、世界中のソフトウエア開発者の生産性を、大きく変えようとしている。

 CIとは、ソフトウエアの開発プロセスにおける省力化作業全般を指す。Jenkinsを導入することで、開発者はソースコードのコンパイルやビルド、テスト、品質検査、サーバーへの展開などを自動化できるようになる。

 Jenkinsのイラストロゴは、蝶ネクタイをした「執事」だ。開発者にとって面倒なビルドやテストといった作業を確実にやってくれる執事、それがJenkinsなのである。

 川口氏は、米サン・マイクロシステムズに在籍していた2004年に、Jenkinsの元となるCIツールの「Hudson」を開発した。当時のサン社内は、プログラムのビルドに人手をかけていた。

 アプリケーションサーバーの開発チームに所属していた川口氏は、日々訪れるソフトウエアのビルドやテストの作業のたびに、社内にいる「ビルド職人」に作業を依頼する必要があった。

 「ビルド作業は自動化できるのに、なぜそうしないんだ。彼らビルド職人は、本来不要な仕事をやっているのではないか」――。

 川口氏の心の中に宿ったそんな「怒り」が、彼をCIツールの開発に走らせた。「心を揺り動かす、感情的な高ぶりがないと、良いソフトは開発できない」。川口氏は、そう断言する。

 「楽しさ」だけが感情的な高ぶりではない。「怒り」という感情的な高ぶりからもOSSは生まれたわけだ。

 川口氏は現在、JavaのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)を提供する米クラウドビーズ(CloudBees)に所属し、Jenkinsの開発やサービス化にフルタイムで従事している。

 CIツールには今、大きな追い風が吹いている。アプリケーションの開発、テスト、展開、運用といった「アプリケーションライフサイクル」の自動化を図る「DevOps(デブオプス、DevelopmentとOperationの合成語)」が話題になる中で、CIツールがDevOpsの実践に不可欠な存在だと見なされているからだ。

 実際、開発ツール「Eclipse」のコミュニティーによる調査で、Jenkinsは最も人気の高いCIツールに選ばれるなど、世界中で関心を集めている。

 Jenkinsによって、世界中の開発者が「本来、人間がやらなくてもよい作業」から解放され始めた。川口氏の「怒り」が世界中の開発者に喜びをもたらしている。


中田敦
日経コンピュータ
 日経レストランを振り出しに、記者歴16年目。かれこれ6年ほど、クラウドコンピューティングの記事を書き続けている。