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写真●日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG)会長/NECビッグローブ基盤システム本部 川村聖一 氏
写真●日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG)会長/NECビッグローブ基盤システム本部 川村聖一 氏
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 「当たり前と思っていたやり方にとらわれないで考えると、意外な方法で通信の品質を上げたり、コストを下げたりできる」。NECビッグローブ基盤システム本部の川村聖一氏はこう語る。

 川村氏はインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)のコアネットワークの設計などを担当する傍ら、2012年から国内のインターネット技術者のコミュニティ「日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ」(JANOG)の会長を務めている。

 当初は業務もコミュニティでの取り組みも国内での活動を主にしていた川村氏が世界に目を向ける転機になったのが、2009年に初めて参加したインターネット技術者の国際会議「APRICOT」(Asia Pacific Regional Internet Conference on Operational Technologies)だった。

 APRICOTにはアジア太平洋地域でインターネット運用に携わる技術者が集まる。数十カ国の人々が参加し、アジア地域のインターネット運用の課題を議論する。

 初めて参加したその会議で川村氏は世界と自分との差を感じて衝撃を受ける。既に何年もJANOGに参加しており、「インターネット技術者に必要な過去も未来も、JANOGに全部あると思っていた」(川村氏)からだ。

英語力だけでなくて交渉力も必要

 国際会議で海外の技術者と話し合うためには、単純な英語力だけでは足りない。各国の社会的な事情やネットワークの特殊性なども理解した上で、総合的な交渉が必要になる。

 例えば、距離の離れた多数の島から成る国ではネットワークの作り方も日本と異なる。また文化的、政治的な様々な事情によって、インターネットへのアクセスが制限されている国も少なくない。

 日本では問題ないある種のコンテンツが、宗教的な理由で「有害」と見なされるケースもある。国ごとのトラフィックの多寡などを話し合うにしても、こうした背景を押さえていないと議論がかみ合わない。

 川村氏は英語圏の居住経験があり、英会話には不自由しないが「日本の中だけで培った知識は通用しなかった。なんとなく日本で仕事をしてきたけれど、(国際会議のレベルで見ると)実力が足りていなかった」と感じたという。

 そうした経験から「常識って、邪魔だな」と感じるようになった。運用スタイル、通信品質の要求などは国によって異なり、日本の常識とは違う。回線の作り方一つとっても、日本は「全方位的に高品質を目指して頑張る」のが普通だが、アジア地域の中には、「この回線は、帯域が狭かったり、パケットの転送効率が悪くなったりしても問題ない」などと、割り切った構築をする国もある。

 「だからと言って、その国のネットワーク環境が不幸せかというと、全然そんな感じはしなかった。『良いネットワークって何なんだろう』と考えるきっかけになりました」

 川村氏は「日本のネットワークは頑張っている」という。しかし日本がいくら高品質でも、接続先の他国のネットワークが「割り切った作り」だった場合、全体のパフォーマンスは低い方に引っ張られる。

 「インターネットはもともとグローバル。日本国内で良いサービスを提供するには、海外のことをもっとちゃんと知ってないとダメなんです」

 最近は、均一さや究極に推し進められた最適化が日本のネットワークの高い運用品質を支えている一方で、かえって「破壊的創造」を抑制しているのではないか――そんな思いすら抱くようになった。