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 人件費の高騰や為替変動に加え、オフショア先の国内市場活性化に伴う優秀な人材の流出など、オフショア開発先を取り巻く環境が急速に大きく変化している。単純なコストダウンや人材確保のためのオフショア開発は、終焉を告げようとしているのか。

図1●オフショア開発での技術者の特徴
図1●オフショア開発での技術者の特徴
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 今回はアジアの現場で起こっている、発注側では見えない課題を挙げながら、オフショア開発の「三重苦」について解説する。現状のオフショア開発での技術者の特徴を図1に示した。オフショア開発を止めて自国に回帰するとの決断もあるが、新たなオフショア開発先(国)を見つけるにしろ、現状の中国やインドでのオフショア開発を充実させるにしろ、三つの課題を直視する必要がある。

現地に即した大胆な人事施策を

 現在、オフショア開発で多くの企業が抱えている課題とは、(1) 現地のコストアップによる単金(単位時間あたりの金額)の値上げ交渉、(2)品質の悪さを上流設計不良と詰め寄られて発生する追加オーダー、(3)挙句の果てにユーザー企業向け品質確保のためのリカバリーコストの増加の三つである。

 (1)のコストアップは時代の流れであり、単金の上昇分が生産性や品質の向上につながるなら問題ない。だがオフショア開発の実情をみると、必ずしも向上しているとはいえない。しかも(2)のように、作業品質の悪さを上流設計の問題とすり替えられてしまい、追加オーダーを迫られるという事態も発生している。結局は(3)のように、最終段階で日本側が多くの工数費やし(オフショア先と共同で行うケースもある)品質向上対策を実施しなければならなくなる。これでは何のためのオフショア開発なのだろうか。

 (1)~(3)の三重苦に陥る根本的な原因は、オフショア開発での「品質の悪さ」に尽きるといえるだろう。その理由をさらに追究すると、優秀な技術者の流出にある。

 筆者は、中国でオフショア開発の品質改善に携わった経験を持つ。QCD(品質・価格・納期)管理の仕組みを作り、着実に実行するマネージャーを育成し、組織として定着させた。ところが、せっかく育てた優秀なマネージャクラスが、すぐに会社を辞めてしまうケースが後を絶たなかった。

図2●中国のGDP推移(出典:中国統計局)
図2●中国のGDP推移(出典:中国統計局)
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 特に最近の中国ではGDPの上昇に伴い、中国向けシステム開発の人月・単金がオフショア開発の価格に近似してきたため、オフショア開発で品質管理を身につけた優秀な技術者がより高い収入で転職する例も少なくない(図2)。

 仕事量が大幅に増えても、プログラマレベルの技術者の調達は容易だが、経験値を積んだ中堅リーダー層は一朝一夕には育てることはできない。オフショア開発の品質改善にあたっては、優秀な人材が辞めない仕組み作りが重要なポイントであり、現地の人事評価や人事給与の仕組みとの連動やキャリアアップ計画などをもっと充実させる必要がある。

 この点、中国やインドの現地大手企業は自国の技術者の価値観を理解しており、このような仕組みを作り易い。しかし日系企業は本社の意向もあり、現地に即した大胆な仕組みを作るのは難しいのではないだろうか。