今回は、組織の老化チェックリストで始まった「組織の宿命」のまとめとして、避けようのない大組織のジレンマについて解説します。「『成長』と『老化』の違いは紙一重」の回でお話したように、企業が成長するとその延長線上に必ず老化が待っています。
企業が商品や会社のブランドを確立して「有名」になると、「寄らば大樹の陰」という人たちがやってきてしまうというのが一例でしたが、こうした例は他にも数多くあります。
ここでのポイントは、こうした事象が個々の企業に固有の問題ではなく、多数の人が集まって行動する組織というものの避けられない宿命であり、特に大企業では必ず起こってくるということです。従って本質的に解決しようと思えば、「組織を限りなく大きくしたい」という企業人の本能そのものを見直す必要があるということになります。
大組織の避けられないジレンマ
これまで述べてきたように、会社というものは成長に伴って、非効率化を促すようなことがどうしても避けられなくなります。組織の成長のために「よかれ」と思って取り組む施策がすべて否定的な方向に働き始めるという皮肉な構図になっています。
しかもこうした事象はすべて根本的には後戻りができないところがポイントです。
これまで述べてきた例としては、
- ブランドを確立すれば「寄らば大樹」の依存型の社員が増える
- 仕事を「組織化」し、「特定の個人に依存しない仕組みを作る」ことで社員の個性や創造性が失われる
- 分割した小さなチームや事業部に権限を与えることでセクショナリズムが蔓延する
- 専門性を上げるための専任組織化で細分化が進む
- 成功を重ねて要職についた人ほど成功体験に固執する
といったことが挙げられます。この他、次のような事象も該当します。
- 付加価値の低い作業を外注化していくことで、スキルが空洞化し、単なる外注管理のノウハウしかなくなる
- 社員の増加や均質化に従って「質より量(数)」を確保するための「社内政治家」が増える
といったことも起きてきます。