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 前回は、米国における企業サイトのパーソナライゼーションの実例を紹介した。今回は、企業サイトのパーソナライゼーションを阻む課題は何かを解説していきたい。

 パーソナライゼーション実現への1番の課題は何と言っても企業ウェブサイトの担当部署と情報システム部門との連携だろう。

 今やウェブサイトを保有していない企業は皆無だろう。ある程度の規模の企業であれば、顧客データシステムやCRMの仕組みを持っていない企業もほとんど無いはずだ。

 だが「御社の企業ウェブサイトと顧客データベースはどのように連携していますか?」「連携させるためにどうすれば良いですか?」といった質問に明快に応えられる担当者はほとんどいないのではないだろうか。

 企業ウェブサイトは歴史的に広報部門が主体となり、データベースを介さない単純なHTMLファイルを、社外向けに公開するという「静的」な仕組みが主流となってきた。したがって、セキュリティやインフラ部分を除けば、企業ウェブサイトに関して情報システム部門が深く関与する機会はあまりなかった。

 一方情報システム部門は、主に社内向けの非公開システムや専用端末や専用回線を利用した基幹システムを担当している。顧客の獲得を目指すというより、なるべく安全で止まらない、運用効率の高いシステムの構築がミッションであることも多い。

 パーソナライゼーションの実現に向けては、最終的に企業ウェブサイトと顧客データベースが何らかの形で連携することが求められる。プロジェクトを行っていく上では、両者が普段の業務とは別に共通のゴールに向けて連携が必要となる。

 筆者の経験でも、一部の先進的な取り組みを行っている企業を除き、企業ウェブサイトの担当部門と情報システム部門とが同じプロジェクトに入ってはいるものの、実現すべきシステム像やゴールなどをうまく共通イメージとして持てずに苦労するケースが多かった。

 結果として、業務上の重要性が高くても、複雑なシステム連携は一旦要件から外しておこうとされがちだ。共通のゴールを共有できるようなチーム構築が必要不可欠となるだろう。

セキュリティーを懸念し過ぎて進化しない

 プライバシーやセキュリティに関する懸念も大きな課題だ。

 企業ウェブサイトでパーソナライゼーションを実現しよう、というアイディアが社内で持ち上がると必ず「ストーカーのようで、気持ち悪がられるのではないか?」といった懸念を表明する人が出てくる。

 「○○さん、こんにちは」とページ上部に表示されるMyYahoo!のような会員向けサイトを想像する人は少ないと思うが、顧客情報や購買履歴を企業ウェブサイトに表示することがパーソナライゼーションだと誤解している人も多い。

 また、個人情報を含む顧客データベースが何らかの形で連携することや、企業ウェブサイトを動的にすることへの安全性を懸念する声が上がることもハードルとなるだろう。

 これまで「静的な」HTMLのある種ファイルサーバーであった企業ウェブサイト上で、何らかのアプリケーションが動くことや基幹系システムと連携すること自体を危険だと考えてしまう、という話はよく聞く。

 プライバシーやセキュリティに関して万全の対策を施すことは当然のことだ。ただし、それは企業ウェブサイト上でいかなるアプリケーションも動いてはならず、他のシステムと連携してはならない、ということではない。

 パーソナライゼーションの実現に際しては、こういったセキュリティやプライバシーなどへの対策も含めた進め方が必要とされるだろう。


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田島 学(たじま まなぶ)
アンダーワークス代表取締役社長
田島 学(たじま まなぶ)




早稲田大学政治経済学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て2006年4月にデジタルマーケティングのコンサルティング会社アンダーワークスを設立。