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 今回は、ちょっとした"苦情"から始めてみたい。気に触る方もいるかもしれないが、筆者が日頃感じていることなので、正直に述べさせていただきたい。

 筆者が医療ITベンダーと接する際に、いつも感じることがある。それは新しいことに取り組まないことである。依頼して了解がもらえるのは、現存のシステムの設定変更やカスタマイズと称するコードの修正程度まで。これまで扱ったことの無い仕組みの導入や、これまで触れたことのない言語でのプログラミングは、まず断られる。

新しいことに取り組む心意気があるのだろうか?

 医療ITでよくある例としては、システムやデバイス間の接続作業。ほぼ全てがソケット接続かファイル共有。データベースに保存されているデータへのアクセスをお願いすると、ODBC(Open DataBase Connectivity)が提案される。REST(REpresentational State Transfer)って何のことでしょう?だし、ウェブサービスとウェブアプリケーションの区別がつかないし、SOA(Service Oriented Architecture)のようなアーキテクチャの議論もできない。

写真1●MIT(マサチューセッツ工科大学)の校舎。筆者は1999年から2001年まで約2年間通った
写真1●MIT(マサチューセッツ工科大学)の校舎。筆者は1999年から2001年まで約2年間通った
(撮影:澤智博)
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 新しいことを提案しても、「持ち帰って上司と相談します」となる。そして、数日後、ひどいときは数週間後に、「相談の結果、実績がないのでお引き受けできません」と回答が来る。実績のないことを顧客に提案できないのは、企業としての信頼を維持するという面からは致し方ない面もあることは理解できる。しかし、実績を重視しすぎると新しいことはできないし、新しい世界に踏み出さない限り永遠に前進はない。

 果たして、彼らや彼らの上司は、新しいことに取り組む心意気があるのだろうか?

 観察しているうちに、二種類に分類できることに気づいた。新しいことに取り組みたくない人々と、新しいことに取り組めない人々だ。前者については自らの意思でそうしているので強制することはできないが、後者を後押しする力になりたいものである。そうすると次に疑問に思うのは、新しいことに取り組めない人々は、日々どのように情報収集し、どのように新たな知識やスキルを獲得しているのか、という点だ。

 筆者が日本で仕事をしている中で、これは日本人の特徴とだなと思えることがある。それは、小手先の技術に注力しがちであることだ。一般には「職人技」と言われるが、ITで言えば「実装」段階で必要な技に最初に眼がいってしまう。もちろんそれは悪いことではないし、それがあるために細部まで気を配って製造された心地よい製品に囲まれながら日常を過ごせる。これは、日本で生活する最大の楽しみに違いない。だが、それだけではやはり何かが足りない。だから、この国のITは冴えないのだ。