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即効性の無い、直ぐには役に立たない勉強もしてみる

 概念、哲学、原理、原則――、これらは全く具体的ではなく、直接仕事の役に立つわけでもなく、即効性もない。しかし、米国でソフトウエアの最前線で仕事をしている人なら、多くが知っていることを紹介したい。Computationの概念・原理である。

 これを教えてくれるのは、大学のコンピュータサイエンスの講義。最近の米国の大学では、その講義の内容をインターネット上に配置し、無料で聴講することが可能になっている。今回紹介するのは、MITのOpenCourseWareの中で、Course6の6.00。MITの学科は、番号で区分されている。Course4は、Architecture、Course18はMathematicsといった具合である。Course6は、Electrical Engineering and Computer Science、略称、EECSでありIT関連の学科である。

写真2●MITキャンパス内で撮影。右手に見えるのが通称ビルゲイツビルディング
写真2●MITキャンパス内で撮影。右手に見えるのが通称ビルゲイツビルディング
(撮影:澤智博)
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 将来、IT関連のプロを目指す大学生の登竜門が6.00(six hundred)と付番された「Introduction to Computer Science and Programming」という科目である(サイトはこちら)。紹介文には、この科目を受講するのにプログラミングの経験は不要と書かれており、教科書すら不要とされている。必要なのは「思考力」。それだけだ。

 使用するプログラミング言語は今でこそPythonだが、筆者が留学当時に受講していた頃(当時は、6.001と付番されていた)は、MITSchemeというかなり独自性の高い言語であった。言わんとしているのは、コンピュータ言語の種類も問わない、というより、全ての講義を終了すると、言語の種類は極めて表面的なことであると認識できるだろう。

 コンピュータを扱うことに関して、極めて抽象性の高い概念を議論するわけだが、この講義を履修してもスタイリッシュなウェブサイトが構築できるようになる訳ではない。では、何を目的としているのか。「Computational Thinking」である。目の前にある課題を、コンピュータを駆使して解決するには、どのような思考法が必要とされるのか、ここではそれを教えてくれる。未知の課題に取り組む姿勢が身につき、新しいことに取り組む楽しさを味わうことができる。第一講でもよいので、可能な方は是非聴講していただきたい。

 今回は、日米の文化の違いを考察しながら、ITに関する学習法を紹介した。即効性はないが、思考法や原理について思索することの重要性を感じていただきたい。大げさに聞こえるかもしれないが、こうしたことが日本のITの足腰を強くし、新たなことに取り組む原動力になると信じている。

澤 智博(さわ ともひろ)
帝京大学医療情報システム研究センター教授
1968年北海道生まれ。1993年に札幌医科大学を卒業後、国内の研修医を経て1995年に渡米。米ハーバード大学マサチューセッツ総合病院で麻酔・集中治療科のレジデントとして約4年間従事する。2000年、米マサチューセッツ工科大学大学院に進学。2002年に帰国後、帝京大学医学部附属市原病院(現:ちば総合医療センター)に勤務。帝京大学医学部麻酔科学講座講師、帝京大学国際教育研究所准教授を経て、2010年から帝京大学医療情報システム研究センター教授。現在、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、東京慈恵会医科大学付属病院麻酔科学講座非常勤講師、医療情報システム創成機構代表理事を兼任。