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 4回目はカンボジアにおけるICTビジネスの可能性についてさらに考えてみよう。カンボジアの日本人商工会への加盟企業は100社を超え、増加の一途をたどっている。業種を見ると、多くは製造業や建設・不動産、金融、商社などだ。ICT分野ではいくつかのベンチャーが先鞭をつけているが、まだ大手はほとんどいない。

 東南アジアでのICTビジネスの拠点には、シンガポールやマレーシア、タイ、ベトナム、フィリピンなどの優先度が高く、続いて注目のミャンマーが挙げられる。カンボジアへの関心は、まだ高くないのかもしれない。筆者がプノンペンで話を聞いいたところでは、カンボジア政府も目立ったICT振興策と呼べるようなものはなさそうだ。JICAの支援で運営されているCJCC(Cambodia-Japan Cooperation Center: カンボジア日本人材開発センター)でも、現段階ではICTへの人材教育に注力しているというわけではないという。

写真1●韓国が現地に開設した施設「CKCC」は先端的な設備を備える(CKCCのサイトより)
写真1●韓国が現地に開設した施設「CKCC」は先端的な設備を備える(CKCCのサイトより)
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 しかしCKCC(Cambodia-Korea Cooperation Center)と呼ばれる韓国が設置した同様の施設を見ると、先端的な設備を導入するなどICTにフォーカスしている印象があった(写真1)。韓国がそれだけカンボジアに関心を示しているだとすれば、日本はもっと注意すべきであろう。筆者は双方の施設を訪問したが、「学校」というイメージのCJCCと、「研究所」的なCKCCのスタンスの違いは感じた。

平均年齢26.8歳の活力に期待

 日本のICT企業からすると、国民の人口が1500万人と大量に人材供給できるわけでなく、また一人あたりGDPが1000ドル以下の経済状態では、オフショア開発拠点としてもICTマーケットとしても見劣りするという判断になるのだろう。

図1●2010年のカンボジアの人口ピラミッド。左が男性、右が女性(出典:World Population Prospects, the 2010 Revision, United Nations)
図1●2010年のカンボジアの人口ピラミッド。左が男性、右が女性
(出典:World Population Prospects, the 2010 Revision, United Nations)
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 カンボジア国民の平均年齢は2010年で26.8歳と非常に若い(図1)。ちなみに、日本の平均年齢は同じ10年で44.7歳である。単純に人口だけで比較すると、カンボジアの将来の活力を見誤る可能性もある。

 JETROが発行する「プノンペンスタイル2013」によると、GDPの約6割を生み出しているプノンペン市内の一人あたりGDPは2000ドルで、これは日本の1960年代後半に相当するという。

 一人あたりGDPが3000ドルを超えると消費社会に入るといわれる。このため、2011年に3000ドルを超えたインドネシアが熱い視線を集めているが、インドネシアが一人あたりGDPで2000ドルを超えたのは3年前の08年だ。新興国でのビジネスを考える際には、3年後、5年後の姿をどう読むかが非常に重要になってくる。