中国、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア…。アジアを中心に世界20カ国・地域で、1000社以上の現地企業が使うクラウドサービスがある。日立製作所がSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)形式で提供する製造業向け電子調達クラウドサービス「TWX-21」だ。EDI(電子データ交換)や見積もり、需給調整といった、企業間取引で必要となる機能をインターネット経由で利用できるのが受けている(図1)。
「当社自身が製造業であるため、同業者が求めるニーズをくみ取りやすい」と、日立製作所情報・通信システム社の桃木典子TWX-21サービス部部長は使い勝手に自信を見せる。国内外で利用企業が合計5万社に上るという「数のメリット」を生かし、各企業から改善要望を吸い上げ、機能拡張を重ねてきている。
「日中合作」で中国進出
こうした機能面とはまた別の強みがある。それは海外への進出手法だ。現地の有力IT企業の力をうまく利用している。
最たる例が中国での展開だ。現地で医療機関や政府機関向けに大規模システムを手掛ける大手IT企業の北大方正集団およびその子会社の方正国際軟件と提携。日立がクラウド基盤を構築し、その基盤上で方正グループのアプリケーションやTWX-21を稼働させ、方正のサービスとして中国の現地企業に提供している。というのも、中国では外資系企業が自前でデータセンター(DC)を持ち、クラウドサービスを提供することが禁じられているからだ。といって日本からサービスを提供するのは、日中間の通信速度に問題があるため難しい。
日立は方正グループとの「日中合作」によって、この課題を解決。方正グループの営業力を取り込み、利用企業の拡大に成功した。
桃木部長は「2015年頃にはTWX-21の利用企業数を国内外で10万社の大台に乗せたい」と目論む。5万社ほど増やす計算だ。伸びしろは大半が海外とみる。日系企業の拠点を含め、海外での新規開拓をこれまで以上に加速していく。