衛星放送や衛星通信を手掛ける多数の事業者が合併して誕生したスカパーJSAT。保有する静止衛星は16機に及び、多チャンネル放送サービスを提供する。収益が安定している衛星通信事業に対して、衛星放送事業は加入者の伸び悩みに直面する。高田真治社長に事業戦略や顧客システム刷新の意図などを聞いた。

1976年3月に一橋大学商学部を卒業。同年4月に日本テレビ放送網に入社。97年6月に報道局社会部長、99年6月に報道局政治部長、2000年10月にメディア戦略局メディア戦略部長。03年6月にスカイパーフェクト・コミュニケーションズ(現スカパーJSAT)の執行役員常務。05年6月に日本テレビ放送網のメディア戦略局長兼コンテンツ事業局長、08年6月に執行役員営業局長。10年6月にスカパーJSATの代表取締役執行役員副社長。11年4月より現職。スカパーJSATホールディングスの代表取締役社長も兼任。1952年6月生まれの61歳。(写真:陶山 勉)
御社は、衛星放送や衛星通信を手掛ける多数の事業者が合併して誕生したと聞いています。
当社には「有料多チャンネル事業」と「宇宙・衛星事業」の2部門があり、収入の比率で言うと放送が2に対して宇宙衛星が1です。放送、通信とも当初はそれぞれ4社でビジネスをスタートさせたのですが、結局は当社1社に統合されました。
1社になったわけですから、両事業とも国内市場は厳しい状況だったと言わざるを得ません。独占状態になったわけですので、当社の社会的な役割や責任は極めて重いと考えています。
解約率上昇をシステムで防ぐ
衛星放送事業の現状はいかがですか。解約率が高まっているようですが。

加入件数は現在380万ですが、必ずしも順調に伸びているわけはありません。新規契約は2011年度が68万件、2012年度が62万件と相当数を獲得していますが、解約数もかなり出ていますので、純増数がなかなか伸びないのです。
東経128度や124度のCS(通信衛星)を使う当初からのサービスは、専用のセットトップボックスが必要でした。従って、顧客はサッカー中継を見たいといった明確な目的があって加入しており、簡単には解約しません。
一方、今の基本サービスはBS(放送衛星)と同じ東経110度にあるCSを使っており、チューナーがテレビに内蔵されています。ですからキャンペーンを打てば新規加入を増やせますが、観たいコンテンツが明確でない顧客も多く、解約も増えてしまうのです。
これまで新規加入の獲得に力を入れてきたわけですが、純増数が少なければコスト効率が悪いのは明らかです。やはり、既存の顧客とのコミュニケーションを密にするとともに、コンテンツを強化して満足度の高いサービスを提供することで、顧客基盤を維持・拡大する方向に変えていかなければならないと思っています。