準グランプリを獲得した大阪ガス。受賞にあたって、情報通信部の綾部雅之部長は「社内にデータサイエンティストの専門組織を持っていることが評価されたと思う」と述べた。
同社の情報通信部にはビジネスアナリシスセンター(BAC)があり、10年以上にわたって経営に役立つデータ活用を手掛けてきた。具体的には、BACに所属するデータサイエンティストが、エネルギー事業やリビング事業といった事業部門に対して、ビッグデータを活用した事業提案や業務改善案などを提案しているのだ(図1)。採用されると、分析作業などに必要なコストを事業部門から受け取る。それがBACの「売り上げ」になる。
BACの河本薫所長は「口を開けて案件を待っているようではダメ。積極的に事業部門に出向く必要がある」と強調する。売り上げ責任を持たせた結果、年間約100件の案件が生まれているという。
こうした提案活動から生まれたのが、ガス機器の故障部品を予測するシステムだ。顧客からの報告内容を打ち込めば、約400万件の修理データのほか、気象データなどを基に故障の可能性が高い部品トップ5を自動で表示する。修理担当の持参部品の精度が上がり、修理の即日完了率を5年間で20%向上させた。
2012年4月には情報システム子会社であるオージス総研に、分析業務の支援を担うデータサイエンスセンターを創設。分析担当者やHadoopのエンジニアなど15人を配置し、データ分析・活用体制の強化を進めている。
大阪ガスは、全社的にデータ活用のリテラシーを上げるために、事業部門におけるデータ分析人材の育成にも力を注いでいる。大学の協力を得て教育プログラムを開発し、2012年4月から事業部門の従業員を対象に、データ分析の教育研修を開始した。初級、中級、上級などのメニューを用意し、2012年度には初級・中級だけで延べ600人を教育したという。