「お好みのワインは」と聞かれても、ソムリエでもないしうまく答えられない。でもおいしい銘柄は飲みたい。もちろん飲みすぎは避けたい。こんな愛飲者の要望をすべてかなえてくれるワインバーがある。しかも、データ分析で。
ソムリエがデータ分析官─。CRM(顧客関係管理)システムのデータを駆使して、顧客をもてなすユニークなワインバーとは、東京港区に店を構える「マックスボルドー六本木」だ。大手のボルドーワイン商社である仏ボルドーワインバンクの日本法人、BWB Japan(東京・板橋)が運営する。2011年11月の開店当初から黒字で、前年比15%増のペースで売り上げを伸ばしているという。
ワインを注ぐのは、「エノマティックマシン」と呼ばれる専用機だ。通常の店舗のソムリエであれば、ワインのコルクを抜き、ワインを注ぐのが重要な仕事の1つだが、マックスボルドー六本木では6台設置したエノマティックマシンがその役割を担う(写真1)。
マックスボルドーの会員になった顧客は、持参したワインカードを使用し、1杯800円~5000円まで48種類のボルドーワインの中から、好みのワインと分量を選び、エノマティックマシンのボタンを押す。するとかざしたグラスにワインが注がれる。
これと同時に、ワインカードから自動的にチャージが差し引かれ、エノマティックマシンはマックスボルドー店内のCRMシステムにデータを送信する。会員がいつ、どの種類のワインを何cc飲んだかといったデータを逐一収集、管理しているわけだ。
エノマティックマシンは1台200万円する特殊装置。だが、CRMシステムは高価なソフトを導入したわけではなく、マイクロソフトのデータベースソフト「Access」で比較的安価に開発したという。
マックスボルドーでのソムリエの仕事は顧客データの分析とワインの提案、そして顧客との対話である。顧客ごとにワインの購入履歴をたどり、1回ごとの酒量、愛飲する価格帯などを把握した上で、1人ひとりの好みに応じた新作ワインを提案する(写真2)。「趣味に合わない、高額なワインをすすめられることはない」。こんな安心感を顧客に与える。