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新iPhoneが最大100Mビット/秒のカテゴリー3止まりの理由は?

 もう一つ、今回のiPhone 5s/5cでアップルの意思が見えたのは、端末のカテゴリーを最大150Mビット/秒対応のカテゴリー4ではなく、最大100Mビット/秒対応のカテゴリー3にとどめたことだ。

 NTTドコモやKDDIは、ここに来て一部地域において20MHz幅を使ったLTEの展開開始をアナウンスしている。20MHz幅の帯域を使ったシステムを使えば、カテゴリー4端末において最大150Mビット/秒のLTEを実現できる。この秋冬モデルからは、カテゴリー4端末が多く登場することが期待され、高速化競争の前哨戦が始まろうとしていたところだった。

 そんな中でアップルがスペックを追求せず、カテゴリー3端末にとどめた理由は、今回の端末を普及モデルと位置づけ、あくまで幅広いユーザーに使ってもらうことを最優先としたのではないか。LTE向けに20MHz幅の帯域を割ける事業者は世界でも限られている。数少ない先進事業者向けのスペックに対応し、端末の原価が上がってしまうことよりも、少しでも端末の原価を下げ、端末をより広げたいというのがアップルの意思に見える。

エリアではKDDI、速度ではドコモ有利、ソフトバンクは防戦か

 最後に、先週公開した記事(関連記事)でも触れた国内3社のLTE競争の行方について、新iPhoneの対応バンドが判明したから見える部分を指摘しておこう()。

図1●iPhone 5s/5cでサポートする国内携帯3社のLTEの帯域   赤点線で囲った部分がiPhone 5s/5cでサポートすることになったLTEの帯域である
図●iPhone 5s/5cでサポートする国内携帯3社のLTEの帯域
赤点線で囲った部分がiPhone 5s/5cでサポートすることになったLTEの帯域である
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 まず追い風が吹いているのがKDDIだ。前述の通り、iPhone 5では非対応であった800MHz帯のBand 18に新iPhoneが対応したため、同社がエリア展開のメインとするバンドが新たにiPhone 5s/5cでは付け加わることになった。同社は800MHz帯のLTEのエリアについて、今年度末に99%の実人口カバー率(同社の定義による)を目指す方針を明らかにしている。現時点でも実人口カバー率は97%(同)に達しており、広大なエリアをカバーする道路が新iPhoneで一本付け加わるようなイメージがある。新iPhoneのエリアについては、KDDIが一歩リードといったところだろう。

 一方でKDDIのトラフィック対策や高速化対応は2GHz帯が担う。高速化エリアは、3Gのトラフィックが空いてきた地方部から展開を始め、徐々に都心部に広げる形で進んでいるという。関東圏では、2GHz帯で10MHz幅となっている地域が横浜や大宮近辺まで来たところであり、「まだまだ都心部でLTEの帯域を広げるのは厳しい」(田中社長)と、バランスを取りながらの対応となる。

 NTTドコモも新iPhoneにおけるネットワーク競争においてアドバンテージがある。新iPhoneではドコモが保有するBand 1の2GHz帯、Band 3の1.7GHz帯、Band 18の800MHz帯の3バンドに対応した。ドコモは、2GHz帯をエリアカバーのメイン用途とし、一部800MHz帯でもエリアを補強。そして1.7GHz帯でトラフィック対策や高速化対応していく方針だろう。

 特に1.7GHz帯はドコモにとって切り札になりそうなバンドだ。これまで東名阪限定のバンドとして3G向けに使われてきたが、3Gユーザーを別の帯域で支えられるメドが立ったため、2013年10月から20MHz幅を一気にLTE化していく方針という。

 同社のLTEはユーザーが急増しているため、都心部では2GHz帯のLTEの混雑振りが目立ってきている。そんな中、東名阪というトラフィックが集中するエリアに対して、20MHz幅という広い帯域をLTEに新たに使えるようになるメリットは大きい。これは新たな高速道路が一本加わるイメージだ。今年度中にエリア展開も一気に進めるということから、都心部での高速化やトラフィック対応の点ではドコモが有利になると見られる。

 一方のソフトバンクモバイルは、前述の通り逆風が吹いている。AXGPで新iPhoneを支えられないことから、Band 1の2GHz帯、そしてイー・アクセスによるBand 3の1.7GHz帯で支えなければならない。なお今回、同社が保有するBand 8の900MHz帯も新iPhoneのLTE対応バンドとなったが、このバンドをLTE向けにフルに活用できるようになるのは時間がかかりそうだ。現時点でこのバンドはRFIDの移行などの作業が伴っているため5MHz幅しか利用できない。3Gユーザーを支えながらのLTE移行は当面は難しいと考えられる。エリア、高速化の面でKDDIやドコモに対するアドバンテージは見えず、一転苦しい展開が予想される。

 以上、ざっと新iPhoneのLTE対応バンドから見える今後の競争の行方を指摘してみた。もっともネットワークの競争は、保有周波数帯だけでは決まらない側面もある。端末の特性を把握したネットワーク設計や、高トラフィックエリアではスモールセルによる展開、エリア間のていねいな調整など、複合的な要素によって、総合的なネットワークの優劣が決まる。

 携帯3社からまったく同一の端末が発売されるというのは、今回のiPhone 5s/5cが初めてのことだ。これまで以上に各社のネットワークの実力に注目が集まることは言うまでもない。各社は自分たちに有利なネットワーク上のポイントを、強調してくることが予想される。ここでいらずらに基地局数やスペックを強調するのではなく、ユーザーが実際にネットワークの向上を大きく体感できるような、健全で本質的なネットワーク面での競争が起こることを期待したい。