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 いわゆるブラック企業について扱った新書である。書名からはIT企業への踏み込んだ議論を期待させるが、考察対象が発散してしまった感がある。体質の硬直化が課題となっているエンタープライズIT企業と、社員の“夢”を搾取するWeb系ベンチャー企業を、一緒くたに「IT企業」と論じてしまったのが原因だろう。両者の欠点への言及が入り交じってしまい、論点がはっきりしない印象を受ける。

 本書の目新しい点は、Web系ベンチャー企業に多い「分社化社長」の問題点に踏み込んだこと。名ばかり管理職よりも悲惨な実態を暴いている。

 なお、本書冒頭の「『ブラック企業』という言葉を生み出したのはIT労働者」というのは誤認だろう。ブラック企業という言葉は2000年代初頭には既に使われていた。評者の記憶ではブラック企業と呼ばれる業種はIT企業ではなく、マンション販売や携帯電話販売、外食に偏っていた。

組織が人を食い潰すとき


IT企業という怪物
今野 晴貴/常見 陽平 著
双葉社発行
840円(税込)